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 免震ゴムの偽装で揺れた東洋ゴム工業で、新たな問題が浮かび上がった。本業のタイヤ事業は好調だが、消費者や取引先からの信頼を失えば、経営を揺るがしかねない。

 性能試験結果の改ざんが明らかになった防振ゴムの交換費用は、補償する方針だ。東洋ゴムは「経営への影響はわからない」としているが、費用は膨らむ可能性がある。

 今年3月に発覚した免震ゴム偽装問題での対策費は、2015年1~3月期に交換費用などとして特別損失140億円を計上したが、15年6月中間決算では計304億円に積み増した。不正が発覚した154棟について段階的に免震ゴムの交換を進めていき、年内に10棟ほどで工事を始めることが決まっている。

 東洋ゴムの15年6月中間決算は、売上高は前年同期比3・8%増の1944億円だったが、免震ゴムの特損が響き純損益は41億円の赤字に陥った。本業のタイヤ事業は北米などでの販売が順調で、売り上げは4・7%増だったが、それを吹き飛ばしたかたちだ。

 免震ゴム事業の年間売り上げは約7億円、防振ゴム事業は約20億円で、全体の年間売上高約3900億円の1%にも及ばない。売上高の8割を占めるタイヤ事業が順調なことが、防振ゴムや免震ゴムといったほかの事業の危機感を鈍らせたとの指摘もある。

 東洋ゴムによると、防振ゴムの交換を求める納入先はまだないという。交換費用が少なくてすみ、タイヤ事業の利益でカバーできたとしても、企業の内部管理体制への信頼が損なわれれば、収益源のタイヤ事業に響くおそれもある。実際、不正が市場に伝わった後から東洋ゴムの株価は急落し、終値は前日から12・9%の下落となった。

 11月には臨時の株主総会を開いて、その後の取締役会で、清水隆史常務が新社長に就任する予定だ。社外からも京セラ元専務の駒口克己氏を会長に招いて、経営の刷新をはかろうとしていた矢先だっただけに、問題の影響は大きい。

 防振ゴム問題の相談窓口は0120・108・656(平日午前9時~午後8時)。(新宅あゆみ)

常務「技術者の倫理意識の欠如を感じた」

 高木康史常務と石野政治常務の会見の主なやりとりは以下の通り。

 ――8月20日にあった内部通報の中身は。

 高木氏「製品の検査成績書に、不実の記載があったという一報だった」

 ――組織ぐるみの不正ではないのか。

 高木氏「当事者は1人ではない。OBを含め、20人に調査している」

 ――なぜ発表が遅れたのか。

 高木氏「事実確認に時間を要した。遅いとの指摘を重く受け止めている」

 ――8月に製品の安全宣言をした後に、今回の問題が出たことをどう思うか。

 高木氏「安全宣言を拙速に出したといわれても、しかたない状況だ」

 ――不正が行われていた期間は。

 石野氏「2005年から今年8月19日までで、08年以降が多かった。同年の異動で、品質保証課の人数が2割ほど減った。これが直接の原因かどうかはいま、調べている。1995年までさかのぼって、調査を今後続けたい」

 ――不正を起こした原因は何だと考えているのか。

 高木氏「コンプライアンスの態勢が会社として発展途上だ」

 石野氏「確定ではないが、文書の管理や記録が適正に行われていなかったことも一因だと考えられる」

 ――免震ゴムの性能偽装問題で社外調査チームから、3度目の不祥事を起こしたら会社の存続が危ういと指摘されていた。この点をどう思うか。

 高木氏「3度目ということで、重く受け止めている」

 ――どうやって再発を防止するか。

 高木氏「2カ月各拠点を回り、技術者の倫理意識の欠如を感じた。(再発防止の)枠組みをつくったが、魂が入っていないといけない。検証していきたい」

東洋ゴムの不正を巡る動き

2007年11月 断熱パネルの認定を不正に取得したことが発覚。当時の社長が引責辞任

2015年3月 性能が不足している免震ゴムを役所やマンションなど55棟に納入していたと発表

同年4月 問題があった免震ゴムの納入先がさらに99棟あったと発表

同年6月 当時の山本卓司社長が辞任を表明

同年9月 新しい社長や会長ら経営陣の交代を発表

同年10月 防振ゴムでも性能データの改ざんが発覚