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 アニメの舞台になった場所をファンが訪れる「聖地巡礼」。各地に聖地が乱立するなか、地域と作り手の緊密な関係が今や、ブームに終わらせないための不可欠な要素になっている。自治体とアニメ制作会社が協力しあったり、行政が両者のマッチングに動いたり、新たな動きが出ている。

 17日にさいたま市で開かれるイベント「アニ玉祭(たまさい)」。県などでつくる実行委は3年目の今年、聖地を持たない自治体も初めて集めた。交流会や展示で地域の魅力をアピールしてもらい、新たなコンテンツに盛り込んでもらうのが狙いだ。担当者は「制作会社が東京に集中する中、地域が舞台になるには出会いの場が必要。聖地の多い埼玉のノウハウも共有できる」。

 会場では、好事例として埼玉・秩父地方を舞台としたアニメ映画「心が叫びたがってるんだ。」(公開中)のパネル展示もある。秩父は元々、テレビアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2011年)の聖地。地元が制作会社とグッズ開発や祭りなどでコラボして良好な関係ができ、2作目につながった。両作を企画した「アニプレックス」企画制作部長、清水博之さん(44)は「何度も足を運んだ『絆』がある」と話す。

 区内に約90社のアニメ関連会社があり、産業支援や地域のPRのために17、18日に「練馬アニメカーニバル」を開く東京都練馬区。区は地元・西武鉄道とテレビアニメ「四月は君の嘘(うそ)」(14~15年)の舞台探しなどを手伝った。09年度に「アニメ産業振興係」を新設するほどアニメを重視する。三浦正人係長(48)は「世界発信できるアニメ産業が集まっていることは区の誇り。制作会社や鉄道と一緒に魅力をアピールできる機会をもっと増やしたい」と話す。

 作品を通じ、地域と制作側が共同で新たな「文化」を生み出した事例もある。金沢市の湯涌温泉の観光協会は、同温泉を舞台のモデルとしたテレビアニメ「花咲くいろは」(11年)の最終話で描かれた「ぼんぼり祭り」を4年前から開く。第2話で名前だけ登場した架空の祭りを、地元側が「実際に行いたい」と制作側に要望した。制作会社「P.A.WORKS」の菊池宣広専務(51)は「祭りを通じて地域の魅力が知られ、作品も地域に長く愛してもらえる」と語る。(増田愛子、小林恵士

地域側にはプロデュースできる人材が重要

 〈山村高淑(たかよし)・北海道大教授(観光学)の話〉 制作側は地域を一種のメディアと捉えて物語を創る。自治体など地域側はブランドイメージを高めたいと考える。アニ玉祭のようなマッチングの場作りは、良い作品を生む方法になりうる。地域側には、制作側と渡り合いつつ、地域資源をプロデュースできる人材が重要だ。