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野沢武史の目

 準決勝に進んだ南半球の4チームから、三つの傾向が見えた。走行距離、ラインブレーク数、タックル成功率(南アフリカ―ウェールズ戦のみ、敗れたウェールズが小差で南アを上回った)で勝った点だ。

 走行距離の長さは自陣からラン中心に試合を組み立てると伸びる。今のラグビーは自陣から球を動かし、相手WTBを引き出さないと裏の空間が作れない。リスクを回避しながらキックで陣地を進め、堅守で粘り勝つラグビーのままでは、チーム力が上がってくるトーナメント終盤では勝ちきれなくなる。

 ラインブレーク数とタックル成功率は攻撃の質の高さを示す。言い換えれば、相手にいいタックルをさせないチームが勝ったのだ。自陣からキックだけに頼らない攻撃をし、さらに攻撃の量に加えて質にまでこだわった差が、勝敗を分けた。

 南半球勢は(最高峰リーグの)スーパーラグビーを戦う中で、W杯に勝つために必要な要素を学び取っているように思う。シーズン序盤はキックの活用、チームができてくる中盤はボール保持、終盤はタックル成功率の高いチームが勝つサイクルが身に染みている。W杯も同様で、1次リーグはキックを使って粘り勝つチームもあるが、決勝トーナメントでは攻撃の質が不可欠になる。4強を南半球が占めた一因といえる。

 逆に北半球は6カ国対抗を中心に遅いラグビーに終始している。ラックを作る際もボール保持者が正面衝突して、ゆっくりと球出しする。負けないラグビーが主流で、攻撃の質、いわば「速さ」を求めていない。

 私は、世界は速さを求め、いかに「ラックゼロ」のラグビーに近づけるかを目指すと思う。オフロード(タックルされながらの)パスが増え、ラックを作る場合も日本のような速さが不可欠になる。試合の中で遅さが顕著になるのが、15メートルラインからタッチラインの間の攻防だ。ここで形成されたラックや、そこから折り返す攻撃にプレッシャーをかけるのが防御の常とう手段になっている。4強はその狭い空間をこじ開ける一工夫があったが、負けたチームは手を打てていなかった。

 今の潮流に合った北半球のチームはイングランドとアイルランドだったが、けが人などの影響でゲームプランを遂行できなかった。イングランドは自陣から攻めることができる人材はいたが、リーダーシップが欠如し、アイルランドはトライを取るまでに時間がかかった。最後に効くのは、攻撃の質で、ここにラグビーの進化がある。これらの傾向から、私はニュージーランドとオーストラリアの決勝になると考える。

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 のざわ・たけし 元日本代表フランカー。慶大―神戸製鋼。2008年度に引退後は慶大ヘッドコーチなどを歴任。現在は日本協会リソースコーチ。テレビ解説者としても活躍している。36歳。

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