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 「子どもの貧困」とはどんな状況を指すのでしょうか。朝日新聞デジタルのアンケートで、子どもの貧困の問題を身近に「感じる」「やや感じる」と答えた人が7割近くいます。まず、きょうと明日、みなさんの意見をもとに考えます。ひとり親家庭で育ち、いまは同じような境遇の子どもを支援する学生の体験とともに紹介します。

母子家庭で育った内山田のぞみさん(22)

 4歳の時、父の借金が原因で親が離婚して以来、バスガイドの母と2人で暮らしています。母は早朝に出勤するので、1人で朝ご飯を食べて小学校に登校していました。9万円の家賃は重く、母は夜遅くまで、時には泊まりがけで働いていました。小学4年で都営住宅に入居でき、負担が減りました。習い事もしており、自分が特別とは思っていませんでした。

 中学校では成績はいい方でしたが進学塾には行かずに都立高校に進みました。進学塾に通う子らを「ずるい」と思っていました。自分の学力レベルが分からず、高校受験の情報格差もつらかったです。

 お金持ちになりたいと思ってずっと勉強していました。貧困を脱するには学歴だ、と。資金を得るため、高校1年から焼き肉店でバイトをしました。具体的に夢を描けたのは、慶応大を卒業した焼き肉店の息子さんが話してくれた大学の話。世界が広がったんです。バイト代で塾に1年通いました。大学の学費は、母がためてくれたお金と私のバイト代の貯金、貸与型奨学金で工面しました。学費、高すぎます。

 そんな経験から、私の中の「子どもの貧困」は教育格差。いま、生活困窮家庭の子に無料で勉強を教えるNPO法人「キッズドア」の活動に関わっています。私も進路の悩みを聞いてくれる大人が欲しかったので、そうした場は大事です。

 私がメディアに取りあげられた時、ネットに「私立大に行っている。それって貧困じゃない」と書かれ、ショックでした。極端な例だけが子どもの貧困だと思わないでほしい。取材でがっかりしたような顔をされたこともあります。かわいそうと思うかどうかで線引きされる。

 生活保護は受けてないし、特別なドラマもない。苦しいけれど、声を出せない人の方が多いと思います。子どもの貧困対策に取り組む活動を通して、私も貧困を狭い範囲で捉えていたのではないかと気づきました。ちょっと貧乏でも、かなり貧乏でも、子どもは悩んでいます。私の支えは、私のことを気に掛けて「のぞみの好きなようにしていいよ。応援してるよ」と励ましてくれる母やバイト先の人、親戚でした。一人ひとりの子どもの困っている思いを、受けとめる社会であってほしいです。(聞き手・中塚久美子)

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 うちやまだ・のぞみ 慶応大4年。子どもの貧困対策に取り組む一般財団法人「あすのば」の学生理事。

親から子へ連鎖しがち

 アンケートには、多くの方から自らの体験が寄せられています。

●「母子家庭です。横浜市は中学で給食がなく、部活に異常なまでの費用がかかる。食べ盛りなのに、なんでもお金がかかりすぎて精神的にもつらい。宿題もでないため、塾に行かせられない家は学力を上げることもなかなか難しい」(神奈川県・30代女性)

●「我が家も母子家庭で、いつもガスや電気が止まりそうになったり、実際に止まり、再開してもらうお金がなかったりなど、常に貧乏生活でした。子どもには申し訳ない気持ちでいっぱいでした。子どもの貧困、と言っても、親の貧困生活をそのままかぶっているだけです。そして、貧困は、親から子へ連鎖しがち。今の日本のしくみでは、です」(福島県・50代女性)

●「貧困家庭で育ちました。父親が無職で経済的に不安定。家の食事は粗末で、いつもおなかをすかせていました。学校給食が唯一のバランスのとれた食事でした。その後両親は離婚し母親が働きに出たので生活は安定しましたが、家庭のだんらんはほとんどありませんでした。子どもには親とのだんらんの時間、そしてバランスのとれた食事、教育、すべて必要です」(東京都・40代女性)

●「両親の監護が受けられない孫2人を養育し十数年。年金収入だけではとても30~40代の子育て世代と比較にはならない。働くことには抵抗ないが約70歳、稼得能力もたかがしれてる。過去に親族里親の認定を申請した。児童相談所は理解を示してくれたが、行政判断は不認定であった」(長野県・60代男性)

●「息子が1歳の時に離婚、今は小4ですが、洋服は今まで靴下や下着に至るまで、知り合いのお古で間に合わせ、新品はほとんど買ったことがありません。2着の服を毎日かわるがわるきているので友達から『毎日おんなじ服』と言われるそうです。習い事は、経済的にきついことと、私が朝昼夜三つの仕事を掛け持ちし、送り迎えできないこととで、ひとつもさせていません」(滋賀県・40代女性)

●「自分自身が一時的に無保険状態の子どもでした。当時は『保険証があったら病院に行きたいんだけど』と思うような場合でも、それを言うと親を困らせると思い、言い出せませんでした」(長崎県・30代女性)

●「遺児家庭です。1歳と小1の息子を抱え今年で13年があっという間に過ぎました。幸いなことに二人とも希望校へは行きましたが、塾には通わせられず、お小遣いもあげたことはありません。子どもたちはいつも私のお財布の中身を気にしています。奨学金は子どもの借金。それでも社会貢献が出来る仕事につきたいと考え自分のことを後回しにしている親子は、心だけ貧困ではないとは思っています」(北海道・50代女性)

●「私の子どもは靴1足。服はほとんどもらいものかリサイクル。おもちゃも本も。今は子どもに自転車を買ってあげたい。何年も前からサンタさんに子どもがお願いしています。苦しいけれど貧乏だと思われないように払うものは払い、体は清潔にしています。私も夫も子どもを愛しています」(東京都・40代女性)

自己責任などありえない

 職場や知人など、身近にある貧困の現状も寄せられました。

●「小学校教諭の友人から、クラス内に6人、給食で飢えをしのぐ子がいると聞きました。夏休みが明けるとガリガリになっているそうです。高卒で働いているけれど給与を親に搾取される子の話も近くにありました。学校にほとんど通えず、字が書けない子も。そのような子どもがいながらも埋もれている現状で、格差はますます大きくなっているように思います」(京都府・30代女性)

●「友人がシングルマザーで、2人の子どもと暮らしている。正社員でフルタイム残業ありでも月13万円ほど。離婚した夫から養育費はもらっておらず、扶養手当数万円でギリギリの生活。彼女自身も母子家庭に育ち、経済的な理由で大学進学がかなわなかった。子どもの境遇に自己責任などありえない。自己責任論は弱いものにしわ寄せがくるだけ」(東京都・30代女性)

●「高校の教員をしている。昼休み弁当もお金もなく、校内をさまよい歩く生徒。修学旅行に行かない生徒が50人以上。親が多忙で弟妹を保育所に送ってから登校し、遅刻がちになる生徒。部活でのプロテイン配布が唯一のたんぱく源である生徒。母親の貧困もひどい。二つ三つの仕事を掛け持ちし疲労困憊(ひろうこんぱい)して痩せている方がいた」(大阪府・60代女性)

●「小児科医なので貧困のため不適切な環境で生活する子どもによく接します。母子家庭でワンルームマンション生活。自転車もなく、学校以外での生活に大きな格差。塾での交流、休みの日の外出、旅行など皆無です。こどもらしい遊びや、体験をする機会はないです。こどもが成長発達してゆくために、学校以外での生活環境の整備が不可欠です」(香川県・60代男性)

●「学校現場で気づくことは、学習の遅れや、親子を通しての諦め感が強いこと。家庭で学習を見てくれる人がおらず、学習の習慣が全く身につかない。そのまま中学へ行くため、高校受験すら諦めている子どもたちが多いように思う」(高知県・20代女性)

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 私たちは10月から、シリーズ「子どもと貧困」をスタートし、貧困の現状について記事を掲載しました。今後、さらに掘り下げ、支援のありようや制度の課題などを取り上げながら、解決の糸口を探っていきます。フォーラム面ではこうしたことをみなさんと一緒に考えていきます。

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 アンケート「子どもの貧困どう考える?」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも受け付けています。

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