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 日本ではいま、子どもの6人に1人が貧困のもとで暮らしています。でも見た目だけでは、助けを必要としている状況かどうかわからないこともあります。子どもの貧困をどうとらえたらいいのか。どういうところが問題なのか。アンケートの声を紹介するとともに、およそ30年研究している専門家にヒントを聞きました。

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 〈貧困率〉 世帯収入から子どもを含めて一人ひとりの所得を試算し、その国でまん中の人の所得の半分に届かない人の割合です。日本の場合、ひとり親など大人が1人の家庭に限ると54.6%(2014年発表)で、先進国のなかでも最悪の水準です。

北海道大学大学院教授・松本伊智朗さんに聞く

 見まわしても、子どもの貧困は見えにくいですね。ボロボロの服を着ているわけじゃない。お金のあるなしにかかわらず、大量生産の同じ服を着ているし、親の多くはスマホを持っています。ぱっと見ではわかりません。

 貧困とは何か。生活していくために必要なものがあるのに、その必要を満たすお金が欠如する。結果、暮らしは破壊され、権利は奪われます。「必要」は時代にあわせて定義しないと対応策を考えることができません。

 戦後の困窮を越えて、高度成長期の1970年代以降、日本の社会福祉の領域で、貧困は過去の問題とされていました。高齢化や介護問題、非行問題が豊かさのひずみとして説明されていました。

 2000年代、貧困は再発見されます。子どもの貧困とは、世帯だけでなく、子ども個人に焦点をあてるとらえ方です。子どもを主体に考えると、子どもの成長や日々の幸せに経済問題がどう影響しているか、どうしたらいいかが見えてきます。

 貧困問題を議論すると、親の責任だという意見が必ず出てきます。考えると、いまほど「親次第度」が高まっている時代はありません。日本では教育費の多くを親が負担します。少子化で、1人の子にどれだけ親がコミットし、お金をかけられるかが、子どもの人生に濃厚に影響してしまう。親の健康状態や財布次第です。

 そのため、親のがんばりがより求められがちです。でも、それで問題が解決するでしょうか。貧困を生み出す社会的な不平等や不利をどのように緩和させるかが政策の課題であるべきでしょう。社会保障制度を充実させ、機能させなければならないのではないでしょうか。

 大きくは二つ。親のお金を増やすことと、お金がなくても困らないようにすること。後者は親の格差を子どもの世界に持ちこまない施策です。保育、教育、医療といった領域で貧困を和らげる工夫が必要です。

 支払う保育料にかかわらず、みんな同じ給食やおやつのプリンが食べられる公的保育所は、子どもにとってうれしい場所です。家がしんどくても、楽しいから行こうと思える学校であればいいですよね。そんな学校にするために、給食費や修学旅行代をどうしたらいいかも考えなくてはなりません。(聞き手・河合真美江)

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 〈まつもと・いちろう〉 1959年、大阪府生まれ。専門は教育福祉論。著書に「子ども虐待と家族」(明石書店)、「子どもの貧困」(同)など。

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 「子どもの貧困」の問題点を指摘する回答も寄せられています。

●「子供にとっての貧困とは、単にお金が無いというだけではなく、生きていくうえで必要な様々な知識を与えてくれる大人が身近にいない、豊かな感性をみがくために必要な機会を得られない、自分が生きていく価値がある人間であると思えない、といった状況までを指すのではないかと思う」(京都府・40代女性)

●「中1で両親が離婚し、高校卒業までは母と妹と団地暮らしでした。母はつま先が裂けた通学靴を見て、いつも心を痛めていたそうです。貧乏エピソードいっぱいあります。でも不幸ではなかった。母は安いパートでもがんばって働いていたし、学校も楽しかったから。『物が豊富=幸せ』ではないと思うんです。問題は人間らしくいるための最低限の衣食住が確保できるかどうか。子どもがまともに生きられないならそれは貧困です。線引きは難しいけど、親に養育能力がないことが本当の意味での貧困なのかなと思います」(愛知県・40代女性)

●「児童福祉施設に勤め、保護される子どもたちの現状、退所後の家庭の生活状況などを見聞きする。団塊の世代が言う『我々もそうだったという根性論』では解決できない経済格差から生まれる、頑張っても報われない現実。そこにもがく子どもたちが、それが当たり前と考え、やる前(もしくは頑張り続けた結果)から諦めてしまう貧困。子どもは生まれてくる環境・親を自分で選べない。最も恐れる貧困は、夢を見ない生活になること。頑張れば良い結果を出せる環境を作ることが必要と感じる」(兵庫県・30代男性)

●「親が金持ちかどうかで自分自身の学歴や将来の大部分が決まってしまっている。努力できる権利すら与えられない人々がいる。せめて大学入試までは国が介入し、親の資産や教育方針にかかわらず同じ条件で勉強できるようにするべきだと思う」(広島県・20代男性)

●「子どもの貧困は社会の分断と階層の固定化を生んでしまう。そうした社会は柔軟性も発展性もなくし、やがて衰退していくだろう。子どもの貧困は、社会の脆弱(ぜいじゃく)さを示す鏡みたいなもの」(徳島県・40代男性)

●「子ども自身が自己肯定感がもてないことが問題だと思う。自分の価値を小さく見がちで、いじめや虐待の標的にもなりやすい。しかし、手厚い保護に甘えて『3代そろって生活保護』という人もいる。貧困の原因は経済だけでなく、親の性格や生活習慣の問題もある。子どもの給食費をサポートをしても親がパチンコに使ってしまっては意味がない」(東京都・50代女性)

●「現代の貧困はとてもアンバランス。可愛い服を着たり習い事をしたりするのに、毎日カップラーメンや菓子パンだけの食事をしたり。働いても働いても稼げないせいか子どものほったらかしも増えたと感じます。息子が以前通っていた公立の小学校で、登校班6家庭のうち4家庭がシングル家庭で、その中の2家庭が生活保護世帯でした。きれいごとなしに子どもにはお金と愛情が必要不可欠です」(大阪府・30代女性)

●「自らの責任ではない貧困で、多くの子どもたちが、豊かな経験を積めなかったり、温かい人びとに囲まれた環境で育てなかったり、『普通に豊かな生活』を送るための教育や仕事のチャンスを奪われ続けている。端的に言って、明白な機会の不平等だと思います。機会不平等社会では、フェアな競争がそもそも成り立ちません。放置していれば、自助努力の理想は説得力を持たず、富裕層に都合の良い詭弁(きべん)、イデオロギーでしかなくなってしまいます」(埼玉県・30代男性)

●「親の貧困、特に母親が社会的に大変弱い立場、社会孤立しやすいことも含めて議論すべきだと感じています。日本の場合、家族主義や儒教文化からくる負の面、困っていても助けを求めることが出来ない『恥の文化』も問題をより複雑なものにしている」(山梨県・40代女性)

●「子どもの貧困は基本的に親の貧困と親の身勝手である。子どもをまともに養育できないのに子どもを作るべきではないし、養育できるだけの経済力もないのに親権を行使するべきでもない」(静岡県・40代男性)

●「貧困にあえぐ子どもたちの多くが母子家庭だと聞きます。離婚、別居している父親が『意思がない』『支払い能力がない』を理由に養育費支払いを免れていることが最大の問題です。離婚しても父親は父親です。養育費支払いを義務化してほしいです」(京都府・40代女性)

●「行政やインフォーマルな社会の救済を親が知らないことも問題だし、地域住民が他人とかかわらない社会性も問題の解決を阻んでいる。子どもは各家庭が育てるものという社会的意識をかえ、子どもは社会全体で育てるという意識でないと、この問題は解決できない」(埼玉県・50代女性)

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