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心の傷と向き合って ある家族の物語:下

 子どもに手をあげてしまう母親のEさん。学校で暴れてしまう小学校高学年の長女と1歳年下の次男を連れて、愛知県大府市のあいち小児保健医療総合センターの心療科を受診した。「不安だから」と言うEさんに、教員も付き添った。

 医師の新井康祥さん(42)は「先生たちが、Eさんのお母さんのような感じだった」と振り返る。親子3人とも、虐待の影響とみられる反応性愛着障害と診断された。Eさんの了解の上、教員に症状を説明し、「一緒に一家を育てていきましょう」と協力を求めた。

 2人の子どもは交互に入院することになった。

 虐待されて育つと「暴力をふるう=強い」と思い込んでしまう子が多い。次男を担当した看護師の山本洋平さん(28)は「強い男とは誰に対してもやさしくできる人のこと!!」と書いた紙を渡した。そして「強い男になって、お母さんを守れるようになるといいね」と繰り返し伝えた。

 自信のなさも気になった。「チェック表」を作り、一日の終わりに振り返る。「暴力をしなかった」だけでなく、「歯磨きができた」「学校に行けた」といった日課も確認し、ほめる機会を増やした。

 次男は毎晩、教員に電話で日常を報告してきた。そして数カ月の入院中、一度も暴力を振るわなかった。

 呼び捨てだった教員を「先生」と呼ぶ。授業中、教室で座ってノートを取る――。きょうだいは、見違えるほど変化して学校に帰ってきた。家族の絵も初めて描いた。

     ◇

 虐待を受けて育ち、自身も子どもに手をあげるようになった母親のEさんも、あいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)で通院治療を受けた。

 DVDを見ながら臨床心理士と親子関係を振り返るプログラムにも参加した。虐待を断つには親も治療に参加するのが大切だ。しかし、担当した河辺真千子さんは「問題意識をどこかに持ちながらも、変わらなくてはと、行動を起こせる親御さんは少ない」と言う。

 Eさんは「やっぱり母親にはなれない」「子どもは治してもらえるけど、私は治らない」と悩みながらも、2カ月の課程を修了。最終日には、「私には普通が分からない。自分の生きてきた世界と違う人と話したい」と話した。

 虐待されて育つと、モデルにな…

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