[PR]

 昨年、患者が162人に上ったデング熱の国内感染が、今季は1人も報告されていない。ウイルスを媒介する蚊の活動期も過ぎたため、ゼロでシーズンを終えそうだ。一方、海外で感染して日本で発症した今年の患者数は、10月下旬で年間の過去最多を超えた。それでも国内感染が出ない理由は、はっきりしていない。

 「夏の間は心配していたが、蚊が少なくなってきてやっと気分が晴れた」。3日午後、東京都渋谷区の都立代々木公園でウォーキングをしていた区内の女性(54)はこう語った。この夏は外出時に必ず虫よけスプレーをつけ、大学生の子ども2人にもスプレーを持たせていたという。

 デング熱は昨年、約70年ぶりに国内での感染が確認された。代々木公園周辺は、国内感染した患者162人の約8割が感染した場所とみられている。推定感染地を東京都内まで広げると患者の98%になる。

 デングウイルスを媒介するヒトスジシマカは、日本での主な活動期は5月中旬~10月下旬。成虫は越冬しない。

 東京医科大病院渡航者医療センターの濱田篤郎教授は「国内感染が見つかっていない理由はわからないが、蚊を増やさない対策や、海外で感染した患者を早く診断する取り組みがうまくいった可能性はある」と指摘する。

 代々木公園は4月から植木の刈り込みを例年よりも深くし、風通しをよくして蚊が潜みにくくした。8月には園内30カ所に看板を立て、肌の露出を避けることや虫よけ剤の使用を利用者に呼びかけた。

 都は今季、代々木公園を含む大規模な都立公園9カ所で、初めて春先から蚊を成虫にさせない薬を排水溝などに散布した。10月23日までに9公園で捕獲した約2700匹にウイルス検査をしたが、すべて陰性だった。検査は11月13日まで続けるという。

 また、患者を早く見つけられるよう検査態勢を強化した。デング熱と早くわかれば、知らずに外出して蚊に刺されることを減らせるためだ。流行国への渡航歴の有無にかかわらず、感染が疑われる人がいたら、保健所の職員が医療機関を訪ね、採取血液を回収してウイルス検査をしている。

 海外で感染して日本で発症した患者の報告数は、今年が10月25日までに251人。データのある1999年以降最多だった2013年1年間の249人を上回った。

 川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「ウイルスが入ってくる事態は続いている。来年以降も蚊に刺されないように注意を続けることが大切」と話す。(福宮智代、武田耕太)

     ◇

 〈デング熱〉 デングウイルスが起こす感染症。熱帯地方に多い。主な症状は発熱や頭痛、筋肉痛など。人から人へ直接はうつらず、患者からウイルスを含む血を吸った蚊が別の人を刺すことで感染が広がる。潜伏期間は2~14日。感染しても症状が出ないこともある。多くは1週間ほどで回復するが、まれに重症化する。発症を防ぐワクチンや、特効薬はない。症状を和らげる対症療法が中心になる。