革新系の論客として知られた政治学者で、ヨーロッパ政治史を専門に、市民運動にも取り組んだ東京大学名誉教授の篠原一(しのはら・はじめ)さんが、10月31日、老衰のため死去した。90歳だった。葬儀は近親者で営んだ。喪主は長男岡山歩(あゆむ)さん。後日、お別れの会を開く予定。

 ドイツを中心に、ヨーロッパ政治の体系を歴史的にとらえて、提示した。55年体制下の自民党政権時代、旧社会党に近い立場から、野党連合による政権交代を訴え、著書「連合時代の政治理論」(77年)にまとめた。中曽根内閣で台頭した新保守主義の考えを批判。PKO協力法の制定には「明確な憲法違反。憲法9条の精神を踏みにじった、という事実は永久に残る」と反対した。

 東京都出身。市民の政治参加にも早くから目を向け、練馬区長の準公選運動では中心となったほか、小金井市の分水路建設反対運動でも活動した。川崎市で90年に全国初のオンブズマン制度が導入されるにあたっては、制度研究委員会委員長として提言をまとめた。

 がんを手術した後に丸山ワクチンと出合い、抗がん剤としての認可をめぐって国と闘い続けた。「丸山ワクチンの製造認可の促進を請願する患者・家族の会」の代表も務めた。

 東京大のほか成蹊大でも教えた。主な著作に「ドイツ革命史序説」「ヨーロッパの政治」「市民参加」「市民の政治学」など。雑誌「世界」などでも評論活動をし、「朝日ジャーナル」で編集にも参加した。