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 6年前、「天皇と軍隊」というドキュメンタリー映画が作られた。監督はパリで暮らしている渡辺謙一さん(64)。第1次安倍政権(2006年9月~07年9月)が掲げた「戦後レジームからの脱却」や民主主義のあり方を考えてもらおうと企画されたが、日本では今夏まで全編の公開はされていなかった。戦後70年の今年に注目を集め、関西でも上映が始まった。

 「天皇と戦後日本の歴史との関係は? 今の日本人が対面しているのは、どんな過去の亡霊か?」。映画の冒頭はフランス語の問いかけとともに、皇居の上空や靖国神社などが映し出される。終戦の詔勅、東京裁判、自衛隊の創設、日米安保条約、中国や韓国との対立といった日本の歩みを表す映像の間には政治家らのコメントも差し込まれ、見た人と共に歴史を考察する作りになっている。

 教育の目標に「愛国心」が盛り込まれた教育基本法の改正(06年12月)、憲法改正手続きを定めた国民投票法の成立(07年5月)……。第1次安倍政権下での日本をフランスから見つめていた渡辺監督は「日本の戦後の歩みと未来が問われている」と考え、記録を収集。09年に仏独共同運営のテレビ局の番組として制作し、約30カ国で放映されたが、日本国内では注目が集まらなかった。

 第2次安倍政権下で進められた安全保障関連法をめぐり、市民が立憲主義や民主主義に向き合った今年。映画への関心が高まり、8月に東京や愛知などで上映され、12月4日まで大阪市の第七芸術劇場(06・6302・2073)、同月12~25日には神戸市の神戸アートビレッジセンター(078・512・5500)でも上映されることになった。

 渡辺監督は「映画を企画したころに感じた国家主義的な空気がいま、強まっている気がする。映画がそれぞれの天皇観や戦争観を改めて見つめるきっかけになってもらえれば」と話している。(花房吾早子)

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