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 「未来を切り開いた」「全国に広がってほしい」――。東京都世田谷区と渋谷区で5日、同性カップルを「パートナー」と認める制度が始まり、文書を受け取ったカップルらから喜びの声が上がった。多様な生き方を認める社会を目指し、新たな一歩が踏み出された。

 5日午後。世田谷区北沢の区施設で、「パートナーシップ宣誓書受領証」が7組14人に手渡された。

 美容師の古谷光枝さん(39)は緊張と感動で涙が止まらなくなった。年下のパートナーと同居して6年。区に制度化を求めた1人だ。「自分の関わった活動が未来を切り開く最初の一歩になるなんて。誇らしくて、うれしいです」

 17年間同居するろう者のパートナー高野幸子さん(44)に、手話で説明し続けた高島由美子さん(45)。多くの報道陣に囲まれ、「自分にとっては当たり前」の同性カップルがマイノリティーであることをあらためて実感したという。

 保坂展人区長は「(受領証は)1枚の紙だが、もたらす力は大きいのではないか。大きくしていきたいと思っている」と話した。

 渋谷区。条例による「パートナーシップ証明書」を区役所で受け取った元タカラジェンヌの東小雪さん(30)は「異性カップルも同性カップルも全く変わらない存在。一日も早く社会の中で平等になってほしい」と目を輝かせた。

 パートナーの増原裕子さん(37)とともに夢がある。互いに子どもを持ち、育てることだ。結婚も出産もあきらめなくていい。自らに、そしてかつての自分たちのように悩む若者に伝えたい。

 証明書の申請は5日までに東さんたち1件のみ。区は、必要書類である公正証書作成に時間がかかることが一因とみる。合計で6万円程度かかる費用に不満の声もある。区議時代に条例化を推進した長谷部健区長は「風穴は開いた。リニューアルしながら、しっかりしたものになっていけば」と話す。(斎藤智子、津田六平)

同じ立場の若者に希望を

 「悩んでいる同じ立場の若者に、こういう方法で暮らしていけるんだと将来に希望を抱いてもらえるなら、ものすごくうれしい」

 公務員の男性と23年間世田谷区で同居する40代の男性教諭は、宣誓を決めた理由をこう話す。親にも職場にもずっと伏せて歩んできた。ゲイだと気づいたのは中学の時。20代後半まで悶々(もんもん)とした。「ノストラダムスの大予言が実現して人類が滅亡することを真剣に望んでいた。そうすれば、30代で死んでしまえるから」

 雑誌で知り合った今の男性と同居を始めた場所は築30年を過ぎたアパート。不動産会社には親戚と説明したが、大家は渋い顔で「管理費を2倍払うんならいいよ」。約6年間、倍の管理費を払った。

 約10年前にマンションを買った時も、銀行に「男2人の共有名義にはできない」と言われた。自分1人でローンを組んだが、実際にはパートナーも費用を負担している。「私が死んだら彼に何の権利もないのはおかしい」と思い、財産管理に関する公正証書を作成した。

 「2人で働いて、2人で飯作って食べて、週末には洗濯したり山に登ったり。そういうふうにごく普通に生きてきたし、これからも普通に生きていきたい。それだけなのに、23年間、いつも何となく隠そうとしてきたんです」

 実名と顔をさらして区に「存在」を認めてもらう活動に加わったのは、「死にたい」と悩んだ若き日を振り返り、若い世代のロールモデルになれるなら、と考えたからだ。

 仕事を休めず、宣誓は後日。ただ、5日夜の関係者の打ち上げには参加した。「少し照れくさいけど、皆で扉を開いたんだと思います」