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 国宝・源氏物語絵巻のうち、徳川美術館(名古屋市)が所蔵する3場面で、下描きの線が大幅に描き直されて本画になっていたことが明らかになった。同館が13日発表した。

 同館は絵巻を保存修理の過程で解体、本画を補強する古い裏打ち紙を除き、透過赤外線などで撮影した。すると幼子を抱く光源氏を描いた「柏木三」で、胸で組まれた幼子の両手は、下絵では源氏に差し伸べる形だったと判明した。また、源氏の左手は下絵ではかなり下にあり、幼子の顔も源氏を見上げる様子で、数回の描き直しがあったとわかった。大規模な保存修理は江戸時代以来という。

 光源氏が正妻・女三宮と貴公子・柏木との間に生まれた不義の子である薫を抱き上げる場面。以前からX線撮影画像をもとに、幼子の手の描き方が違うのではという指摘があったが、裏付けられた。同館の四辻秀紀学芸部長は「光源氏が父の妃・藤壺と密通した自分の因果におののく複雑な心情が主題なので、薫がほほ笑んで手を伸ばすのは具合が悪い。単純に物語の挿絵として描かれたのではなく、内容を掘り下げようとする絵師の苦心のあとがわかる」と話す。下描きから本画が完成するまでの過程もわかり、絵巻がどう作られたかに近づける期待もあるという。

 「竹河二」と「柏木二」でも構図の変更が見つかった。

 同館80周年記念特別展「国宝 源氏物語絵巻」(12月6日まで)で、「柏木三」を含む現存する全19場面が公開されている。(小林裕子)

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 源氏物語絵巻 12世紀に描かれた現存する最古の絵巻物。全部で4巻分が残っており、3巻15場面を徳川美術館、1巻4場面を東京の五島美術館が所蔵している。