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 富士宮やきそば、厚木シロコロ・ホルモン、甲府鳥もつ煮……。数々のご当地グルメのブームを引き起こし、地域おこしにつなげてきたイベント「B―1グランプリ」が今年、初開催から10年目の節目を迎えた。毎回数十万人を集め、数十億円規模の経済効果を生み出す催しに成長した一方で、「当初の理念と違ってきた」「参加が負担」と主催組織を退会する団体が目立つ。B―1グランプリに何が起きているのか。

 八甲田山のふもとに広がる、奥入瀬渓流や十和田湖など豊かな自然に恵まれた青森県十和田市で10月3、4日、第10回B―1グランプリは開催された。

 人口約6万4千人のまちに、2日間で計約33万4千人(主催者発表)が訪れた。北海道から長崎県まで、ご当地グルメでまちおこしをはかる62団体が集結。自慢の料理を提供するブースを並べた。ギョーザをかたどったゆるキャラやキャベツのマスクなど工夫を凝らした姿でわがまちのPRに声をからした。

 閉会式では壇上に全参加者が上り、肩を組んでテーマソングを唱和した。だが、そこには第1回から欠かさず参加を続けてきた「小倉焼うどん研究所」(北九州市)のメンバーの姿はなかった。

脱退の団体「事務局の運営に違和感」

 「事務局の運営に違和感を覚えるようになった」。小倉焼うどん研究所の代表の竹中康二さん(47)は理由を語る。事務局とはグランプリを主催し、出場団体を束ねる愛Bリーグ(ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会)を指す。

 グランプリは2006年に始まった。八戸せんべい汁研究所(青森県八戸市)が、各地でご当地グルメを用いたまちおこしに取り組んでいた団体に、「一堂に会するイベントを開いて全国にPRしていこう」と呼びかけたのがきっかけだ。

 第1回大会には1万7千人が来場。参加10団体が「今後も協力しあおう」と愛Bリーグを発足させた。竹中さんは「当初は手作りのイベントで、互いに助け合おうという雰囲気に満ちていた」と振り返る。

 違和感を覚え始めたのは、大会が数十万人を集めるまでに成長し、リーグ事務局がブランド管理を強化するようになってからだ。

 例えば、各団体が食品メーカーやコンビニと商品を共同開発して販売する場合、「B―1グランプリ」のロゴを入れて、愛Bリーグとその団体に売り上げの一部が支払われる契約を結ぶよう求められた。

 地域でご当地グルメでのまちおこしに取り組む、愛Bリーグには加盟していない団体と協力しあう組織を立ち上げたときは、「愛Bリーグの理念を理解していない団体との活動は好ましくない」と注意を受けた。

 「『代表の交代を』とまで言われるようになり、違和感がぬぐえなくなった」と今年6月に退会。宮崎県延岡市の「延岡発祥チキン南蛮党」や大分県宇佐市の「USA☆宇佐からあげ合衆国」など、東九州道沿線の団体と立ち上げた「東九州風土フード連盟」に活動の足場を移した。

 地元名産のジャガイモを使ったコロッケでまちを売り出す「みしまコロッケの会」(静岡県三島市)は09年に初出場。2年連続で入賞したが「愛Bリーグと目指す方向性の相違がある」と12年8月に退会した。

 副会長の渡辺靖乃さん(50)は「愛Bリーグの厳しい運営方針についていけなくなった」と話す。例えばテレビ局の取材を受ける際、地方局なら個々の団体が、キー局なら愛Bリーグが対応することになるが、判別が難しいときもあり、取材を受けて注意されることもあった。

 1日数千食を提供するB―1グランプリで、協力してくれる地元業者中心のブースを出した際も、「特定の業者が中心となると、まちおこしが広まらないこともある」と注意された。

 渡辺さんは「互いが気持ちのよい付き合いができているうちに退会することにした」と話した。

交通費・宿泊費なども負担に

 負担の大きさから退会した団体もある。

 ショウガ醬油(じょうゆ)をかけた独特の食べ方をする「姫路おでん」でまちおこしをする「姫路おでん普及委員会」(兵庫県姫路市)は市からの助成金が14年度に打ち切られたのを機に、愛Bリーグを退会した。

 グランプリでは1日数千食を提供するため20人前後の人手が必要だった。ボランティアを募っても交通費や宿泊費などで数百万円を要した。原価200円のおでんを400円で4千食売っても大きな赤字が残り、助成金なしでは立ちゆかなくなった。代表の前川裕司さん(60)は「身の丈に合った活動に戻ろう」と退会を決め、おでんでまちおこしをはかる各地の団体などと協力し、年1回、おでんサミットを開催している。

 第3回大会で1位を獲得した「厚木シロコロ・ホルモン探検隊」は11年に退会した。「厚木と言えばシロコロ」と言われるように普及をはかるという当初の目的が達成されたためと説明する。

 代表の中村昭夫さん(52)は「ご当地グルメブームをここまで盛り上げたのは、間違いなく愛Bリーグの功績。一方で規模が大きくなり運営が難しくなったのも事実」と指摘。「卒業生としては、ご当地グルメの新たなスターを生み出す場として長く続いてほしい」と話す。

愛Bリーグ「ここまで大きくなるとは」

 こうした声をリーグ側はどう受け止めているのか。

 俵慎一事務局長は「退会した団体に反論はしない」とした上で、この10年の歩みを「遊びの発想から生まれたイベント。ここまで大きくなるとは思っていなかった」と振り返る。

 グランプリは第5回の厚木大会から参加団体も来場者数も急増、一気に注目が高まった。一方で、上位を獲得したご当地料理の名を冠した質の低い料理や加工食品が出回った。

 「放置すれば、消費者の期待を裏切り、各団体の活動にも悪影響を及ぼす」と商標管理の仕組みを設けることを決め、各団体の支援にもつながるようにと提携商品の売り上げの一部が愛Bリーグ事務局と団体に入る仕組みもつくった。事務局では現在、6人の職員が大会の準備や商標管理などに専従している。

 俵事務局長は「愛Bリーグはご当地グルメでまちおこしに取り組む互助団体。ルールはすべて参加団体による話し合いで決めており、当初からの理念は基本的に変わっていない」と説明。「今後はご当地グルメ以外にも、それぞれのまちの魅力を伝えられるイベントにしていきたい」と話す。(吉田啓)