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 安倍晋三首相はパリの同時多発テロ事件を受けて、「国際テロ情報収集ユニット」を12月上旬にも発足させる方針を表明した。背景には、来年5月に三重県志摩市で開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年東京五輪の成功を安倍政権が重視していることがある。ただ、省庁の縦割りを打破できるかが課題となりそうだ。

 首相は22日、訪問先のマレーシアでの記者会見で「テロ対策を一層充実、強化する」などと強調。来年4月をめどに準備を進めていたユニットの前倒し設置を表明した。

 ユニットは、過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人殺害事件を踏まえ、今年5月に政府が外務省内に設置を決めた。トップに前警察庁外事情報部長の滝沢裕昭・内閣審議官を充て、同庁や外務省、防衛省、内閣情報調査室、公安調査庁などから職員を人選し、準備してきた。

 政府関係者によると、ユニットにはアラビア語に堪能な職員やイスラム地域情勢に詳しい職員を数十人規模で集める。中東などの大使館に赴任して情報収集を行うほか、担当地域と行き来し、現地の情報機関と情報を共有する。

 政府にとって情報収集や分析の機能強化は長年の課題だった。05年、当時の町村信孝外相が設けた有識者懇談会が「特殊な対外情報収集活動を行う固有の機関の設置」を提案。13年1月にアルジェリアで起きた邦人らの人質事件で省庁間の情報共有不足が指摘され、安倍政権は国家安全保障会議(NSC)や事務局の国家安全保障局(NSS)を設置した。その後、情報漏洩(ろうえい)に重い罰則を科す特定秘密保護法も制定した。

 しかし、今回新設されるユニットは各省庁出身者の混成組織であり、「情報を共有して十分に機能できるかが課題だ」(政府関係者)との指摘がある。また、「安保戦略の司令塔」と位置づけられるNSCやNSSとの関係について「重要な情報は当然NSSとも共有する」(外務省幹部)方針だが、どこまで共有され、政府の政策に反映されるかは不透明だ。

 今回は既存の枠組みで各省庁から人材を集めており、テロ対策に関わる政府関係者は「法整備もお金も全く不足している。パリの事件は日本がどこまで覚悟して情報収集に当たるのか、重い課題を突きつけた」と話す。高度化するテロへの対応では海外での諜報(ちょうほう)活動の必要性にまで踏み込む声もあり、今後議論を呼びそうだ。(渡辺哲哉、冨名腰隆)

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