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 秋サケ漁が振るわない。岩手県が今月10日にまとめた漁獲速報では、昨シーズンと比べ、沿岸漁獲の水揚げ量は約4割減少している。来春の稚魚の放流に必要な採卵数を確保するため、山田町のサケのつかみ取りイベントも中止に追い込まれた。震災の影響はどこまで及ぶのか、回復は見込めるのか。関係者は、今後ピークを迎えるサケの回帰に期待している。

 19日未明、宮古市臨港通の宮古港。三陸沖の12カ所の定置網漁場から船が次々に戻り、秋サケを水揚げした。慌ただしく作業していた男性は「以前なら朝夕2回の水揚げだったが、今年は朝だけだ」。

 同市魚市場によると、水揚げ量は今のところ昨年同期に比べ17万匹以上少ないという。潮の流れが悪く、秋サケの通り道ができる潮目が漁場と離れていることが主な原因と見る。

 大沢春輝参事は「今月下旬から回帰のピークが始まる。海況がよくなって漁獲が回復してほしい」と今後の漁に期待する。

 震災で沿岸の孵化(ふか)場が被害を受け、4年半前の放流は例年の3分の2にとどまった。県はシーズン前から、沿岸に戻ってくるサケは約5百万匹で、震災前の6割程度と予測はしていた。しかし、これまでの実績は、予測をさらに下回っているという。

 主力の定置網による漁獲は、10日までに96万匹で、同じように震災の影響を受けた前年同期に比べても、3分の2にとどまる。県は沿岸の海水温が高かったためサケの南下が遅れていることも一因とみている。

 不振は市場への出荷だけでなく、来春の稚魚の放流に向けて川に戻ってきたサケから卵を採る作業にも影響している。計画採卵数の9割を下回ったとして、漁協や自治体でつくる県さけ・ます増殖協会は13日、海の定置網などで採った出荷用の一部を採卵用に回す緊急対策を発動した。協会は「卵を確保できないと、サケが帰ってくる4、5年後の漁獲に影響する。何とか確保したい」としている。

 山田町は、29日の「鮭(さけ)まつり」で、恒例のサケのつかみ取りを中止する。200匹を用意する予定だったが、極端な不漁で、採卵を優先せざるを得ないという。

 漁獲量は10日現在、山田魚市場で前年同期比40%減の6万1197匹、船越魚市場で75%減の3万1870匹にとどまっている。

 県は沿岸の海水温は下がってきているとして、回帰のピークとなる12月上旬にかけて漁獲・採卵数が増えるのを期待している。(山浦正敬、阿部浩明、星乃勇介)

「うまくいけば商品化」

 新巻きザケを首都圏や県内に出荷する釜石市の海産物加工販売会社「リアス海藻店」の平野嘉隆社長(44)は「1週間前ぐらいからサケが取れなくなった」と話す。

 新巻きサケは贈答用などとして出荷するが、深刻な不漁で、例年の半分程度しかつくれないのではないかとみている。加えて最近の天候不順で、本来は北風の吹く中で天日干しする作業が順調にいかない。建物内で扇風機の風で乾燥させているものの、屋外より日数がかかってしまうという。

 そんな中の19日朝、釜石市の魚市場に多くのブリがあがった。地元でもかつては新巻きブリをつくっていたとして、平野社長は試しに10匹を塩漬けにした。「この地域で安定的に取れる魚ではないが、うまくいけば商品化できるかもしれない」と語った。