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 陸上自衛隊の元東部方面総監(64)が2013年、在日ロシア大使館の軍人外交官(50)に防衛省の内部資料を渡したとして、警視庁公安部は来月上旬にも、この2人を含む6人を自衛隊法(守秘義務)違反の疑いで書類送検する方針を固めた。捜査関係者への取材でわかった。

 東部方面総監は、関東甲信越と静岡県の1都10県を管轄する陸自東部方面隊(東京都練馬区)の最高責任者。ロシアの軍人外交官(武官)は帰国しており、警視庁は来週にも外務省を通じて出頭するよう大使館に要請する。

 捜査関係者によると、元東部方面総監は退官(09年7月)後の13年5月ごろ、自衛隊の軍事訓練や戦術などをまとめた「教範」と呼ばれる資料をロシア人元武官に渡し、情報を漏洩(ろうえい)した疑いがある。部下だった自衛官ら男女4人に頼んで入手したといい、警視庁はこの4人も書類送検する。

 この教範は、各部隊の行動基準が掲載され、自衛官の教育や訓練に使われる。訓練の計画から実行までの流れや、部隊の運用がまとめてあるという。重要な機密事項は含んでいないが、警視庁は、外部に漏れれば陸自の業務に支障が出るおそれがある内容で、隊員が職務上知り得た秘密にあたると判断した。

公安幹部「スパイ活動の入り口」

 警視庁や防衛省の関係者によると、ロシア人元武官は2012年2月、ロシア大使館で開かれたレセプションで元東部方面総監と再会した。かつて日本で勤務したときから顔見知りで「もう退官されたんですね」と話しかけ、自衛隊の展開について質問しながら「ロシアの部隊も勉強したい。教科書はありませんか」と持ちかけたという。

 教範の授受は、東京都千代田区内の高級ホテルで行われたとされる。緑色の表紙で2センチほどの厚さだった。一般には入手できないが陸自では売店で販売されている。公安部幹部は「秘密性の低い資料を頼んだのは、相手に罪の意識を感じさせないためだろう。スパイ活動の入り口で、協力者にする初期段階だったのではないか」と話す。

 捜査関係者によると、元武官はロシアでは情報機関「軍参謀本部情報総局(GRU)」に所属していたとみられ、過去にも在日ロシア大使館で勤務した。10年5月に陸軍大佐として着任し、日米合同演習の内容から米軍の動向を探るのも狙いの一つだった、と公安部はみている。