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 「訳の分からない失礼な文章」「これだけ言ってもご理解されない体質の人」――。ニュージーランド南部地震で死亡した富山市立富山外国語専門学校生の遺族について森雅志市長が会見で述べた発言を、25日の富山地裁判決は名誉毀損(きそん)と認めた。市に計60万円の賠償を命じる判決にも、森市長との面談を求めてきた原告は「満足できない」と複雑な表情を見せた。森市長はこの日、取材に応じなかった。

 原告は、倒壊したカンタベリーテレビ(CTV)ビルでいずれも当時19歳だった娘を亡くした、高岡市の金丸直弘さん(56)▽富山市の堀田和夫さん(60)▽金沢市の菊田邦俊さん(65)。地震は11年2月にクライストチャーチ市で発生し、CTVビルでは語学研修中の同校の学生12人が死亡した。

 判決によると、森市長は、12年6月の定例会見で、面談を求める遺族らの要望書について「訳の分からない失礼な文章で、即断りました。物事の節度、有り様、礼儀をわきまえない手紙でした」「きちんとした礼儀や節度を保って文章を出さなければ、会ってくださいと言われても私は市民全体を代表する立場ですので、そうはいかない。これだけ言っても意味の分からない、ご理解されない体質の人だろうと思いました」などと発言した。

 広田泰士裁判長は、要望書は森市長を非難していないと指摘した上で、市長の発言を「意見、論評の域を逸脱し、原告の異常性を強調して人格、性質を攻撃するもの」と認定。広く報道されうる会見で発言した点や影響力の大きさを考慮し慰謝料の支払いを命じた。

 一方で、森市長は11年7月の会見では、語学研修について「学校の公式行事ではない」「本人が自己責任として判断して、任意で参加している」、12年6月の会見では「ホストファミリーについておざなりになって、ホームステイ先にお礼も言えずに帰った人もいるのではないか」などと発言。原告は、これらも名誉毀損(きそん)にあたると主張したが、広田裁判長は「原告らの社会的評価を低下させたとはいえない」などとして退けた。

遺族 面談かなわず「納得できない」

 原告の堀田和夫さん、金丸直弘さんは、判決後に富山地裁前で取材に応じ、「主張の一部が認められたことは良かったが、満足は出来ない」と話し、そろって複雑な表情を見せた。

 森雅志市長に面談を求めてきたが、かなわなかった。悩んだ末、昨年2月に最終手段として提訴。市長の証人尋問も求めたが、裁判所に認められなかった。

 1年半に及ぶ訴訟の末、名誉毀損(きそん)は認められたが、森市長との面談はいまだ実現していない。堀田さんは「お金の問題じゃない。説明責任があるし、真摯(しんし)に応えない態度は許せない。(市長)自ら話さないと通じない」と強調。金丸さんも「謝罪も説明もなく、納得はいかない」とやるせなさをにじませた。

 控訴について、堀田さんは「市からどんなボールが返ってくるか。誠実な対応をしてもらえるなら、こちらも考える」と語った。

 森市長はこの日夕、富山市内のホテルで開かれた会合に出席後、集まった報道陣に「取材には応じない」とだけ述べて足早に会場を後にした。市は「コメントは出さない」とし、控訴するかどうか今後検討する。(竹田和博、江向彩也夏)