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 「核の神話・第2部」では、「マンハッタン計画」に始まる米国の核開発の現場を訪ねて、インタビューを重ねます。

 第2次世界大戦で米国が極秘に原爆を開発した「マンハッタン計画」。その関連施設を国立公園にする構想について、施設を所有するエネルギー長官と国立公園を管轄する内務長官が11月10日に署名し、正式に国立の歴史公園に指定された。

 関連施設は、①ニューメキシコ州ロスアラモス(原爆の設計・組み立て)②テネシー州オークリッジ(広島原爆のウラン濃縮)③ワシントン州ハンフォード(長崎原爆のプルトニウム生産)の3カ所。内務省傘下で歴史解釈を担当する国立公園局が被爆地広島・長崎両市の意見も踏まえて施設整備し、2020年ごろの本格開園をめざすという。

 このうち国立公園の「目玉」になりそうなハンフォードの「B原子炉」が博物館としてすでに一般公開されていると聞き、米エネルギー省などが主催する見学ツアー(無料)に参加した。

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 成田から直行便で9時間、米西海岸のワシントン州シアトルに入る。大リーグ・マリナーズの本拠地セーフコフィールド球場をあとに、レンタカーでハイウェーを東南へ走る。米陸軍の演習場があるヤキマの台地には「ガラガラヘビに注意」の看板が立つ。約3時間後、「ハンフォード施設」に近づくにつれ、道路沿いの景色が肌色から緑色に変わっていく。ブドウ畑にはワイナリーが点在し、つい寄り道したくなる。このあたりの畑で採れるじゃがいもは、ファストフード店用として日本にも輸出されているという。雄大な流れのコロンビア川には水鳥やレジャーボートが浮かぶ。

 長年核開発にあたったハンフォードは、「西半球で最も放射能に汚染された土地」と言われているはずだが……。豊かな自然に、自分の目を疑った。

原爆誕生の地、最盛時13万人動員

 ハンフォード施設の南、リッチランド市にあるB原子炉見学ツアーの事務所でまず、マンハッタン計画やハンフォードの歴史についての展示やビデオを見た。

 米国が核開発に乗り出したきっかけは、1939年8月2日付でユダヤ人理論物理学者アルバート・アインシュタインがフランクリン・ルーズベルト大統領に送った手紙だったとされる。ナチス・ドイツから米国に逃れたアインシュタインは、やはり欧州から米国に逃れたユダヤ人核物理学者レオ・シラードの訴えを受け、ナチス・ドイツが核分裂の連鎖反応を利用した「極めて強力な新型爆弾」を開発する恐れがあり、米国も緊急に研究する必要があると大統領に進言した。

 大統領はこれを受け入れ、新型爆弾の材料となるウランの購入などに着手。英国と連携しながら原爆開発の方針を決定した。日本軍による真珠湾(パールハーバー)攻撃から半年後の1942年6月、当初ニューヨークに本部を設置することになっていたことから「マンハッタン工兵管区」を創設(実際はワシントンの陸軍省内に設置)、ロスアラモス、オークリッジ、ハンフォードの3カ所に開発拠点を置くことを決めた。

 秘密の原爆開発のための土地を探していた米陸軍のフランクリン・マサイエス大佐がハンフォードに白羽の矢を立てたのは、広大な土地があり、コロンビア川から原子炉を冷却するための豊富な水が得られ、上流のグランドクーリーダムからの電力供給ものぞめたからだ。過疎地なので秘密も守りやすい。数千人の農家や先住民族を追い出し、科学者や労働者ら5万人余りがハンフォードに移住して従事した。ロスアラモス、オークリッジを含めて軍・産・学からマンハッタン計画に動員された人々は最盛時で13万人、当時の金で20億ドルが投じられた米国の国家的大プロジェクトだった。

 ハンフォードでは、シカゴ大学の核物理学者エンリコ・フェルミらが原子炉でウランから核分裂させてプルトニウムの量産に初成功。1945年7月16日のニューメキシコ州での世界初の核爆発「トリニティー実験」や、8月9日に長崎で実戦使用された原爆「ファットマン」の材料として使われた。

 見学ツアーのビデオには、長崎に投下された原爆のキノコ雲や、日本降伏のニュースを聞いて歓喜に沸くニューヨークの人々が映し出されたあと、ナレーションが入る。「米国の科学者たちは、たった2年余りでこれを成し遂げたのです。この成果は世界の行方を変えました」。再びキノコ雲が映し出された。

 約1500平方キロの広大なハンフォードの敷地には、戦時中に稼働した3基(B、D、F原子炉)だけでなく、戦後さらに6基の原子炉がコロンビア川沿いに建設され、88年に生産停止するまで、旧ソ連との核開発競争の主戦場として、長崎原爆約7千発分にあたる55トン以上の兵器用プルトニウムを生産した。89年以降は除染作業が続けられている。

 見学ツアーの家族連れら約30人とともにバスに乗って、ハンフォード施設の敷地内を進む。「左手をごらんください。ラトルスネーク(ガラガラヘビ)山です」。立ち入り禁止区域の荒野の向こうに山が見える。元技術者だというガイドの男性がしゃがれ声で説明した。「さあ、B原子炉につきました。お気をつけください。できるだけの除染はしましたが、まだ汚染物質は残っていますから」

 B原子炉の建屋の入り口に「世…

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