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第4章:2

 裁判員の選任手続きに臨むため、松尾悦子さん(41)は2010年10月19日朝、早めに仙台市内の自宅を出た。バスで地裁に向かった。

 通されたのは、長机が並ぶ大きな会議室。部屋にはお茶やお菓子、雑誌が用意されていた。

 自分より前に来ていたのは2人。お茶を飲んだり、雑誌を見たりしているうちに、続々と候補者が集まってきた。50人近くになっただろうか。担当する事件の概要が説明された後、1時間ほどして、職員の声が部屋に響いた。

 「お待たせしました」。モニターに九つの数字が出た。

 2番目に「3」があった。松尾さんの受付番号だ。思わずニヤッとした。「ヤッター!」。心の中で声にならない声をあげた。そんな松尾さんの横を、選ばれなかった候補者たちがうれしそうにわさわさと引き揚げていった。

 裁判員に選ばれたのは、男女3人ずつの計6人、補充裁判員は男性1人女性2人の計3人。年齢も20代から60代と、「老若男女」がそろった感じだった。

 9人は別室に移動、3人の男性裁判官と顔を合わせた。50代後半とみられる裁判長から「選ばれちゃいましたね」と声をかけられた。

 裁判長は穏やかな口調で「疑わしきは罰せず」などの裁判のルールも説明した。松尾さんは「限りなく黒に近いグレーでも黒でなければ、シロという意味だったな。公民で習った通りだ! 教科書に出てきた」などと思いながら聞いた。

 この日、一番びっくりしたのは弁当だった。

 裁判員と補充裁判員、裁判官12人分の弁当がすでに用意されていた。しかも、強制的に代金を徴収された。間違ってもおいしいと言える代物ではなかった。「マスコミがいるから食堂には行かないように」との指示もあり、毎日、地裁の用意する弁当を12人で一緒に食べた。

 裁判官に対しては、六法全書が歩いているようなお堅いイメージを描いていた。ガリ勉で、コミュニケーション能力に欠けているのではないか、と。しかし、意外と「ふつうの人」だった。

 必死に裁判員たちを和ませよう…

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