[PR]

第4章:3

 2010年10月19日午後に仙台地裁で始まった初公判。裁判員を務める松尾悦子さん(41)の目の前に現れた被告の男(裁判当時38)は、ふつうのおじさんだった。

 被告は、知人の男(裁判当時36)らと共謀し、04年に風俗店経営者(事件当時30)を拉致して山中で殺害、自宅から5千万円などを奪ったとして、強盗殺人罪などに問われていた。すでに別の強盗殺人未遂事件で07年に懲役24年を言い渡され、受刑中の身だった。

 松尾さんは、顔に傷があり、下手をすれば暴れ出すような被告の姿を勝手に想像していた。しかし、予想は裏切られる。見た目は友だちにいてもおかしくないような感じだった。

 罪状認否で、被告は「殺害する計画は知らなかった」と強盗殺人罪を否認した。

 検察側は「被告は知人の男と共謀して風俗店経営者を殺害して財産を奪う話し合いをし、風俗店経営者の首にかけたロープを引っ張った」などと主張。それに対して、弁護側は「被告は男から風俗店経営者に暴行を加えて金のありかを聞き出してほしいと頼まれたに過ぎず、首謀者はあくまでも知人の男。殺害行為には加わっていない」と訴えた。

 知人の男と被害者の風俗店経営者は同じ犯罪組織のリーダー格、被告はかつて所属した暴力団で男の兄貴分。被害者も加害者も同じようなグループに属する仲間だった。

 遺体は発見されておらず、物的証拠もなかった。松尾さんらに示されたのは、死亡した被害者を埋めたとされる穴の写真だけだった。

 「なぜ遺体がないのか?」

 遺体がないということは、埋められた穴からだれかがどこかに運んだことになる。「何のために?」。疑問が疑問を呼んだ。

 こんな状況で殺人罪を問えるのだろうか。もしかして全員がうそを言っているかもしれない。しかし、この裁判では被害者の死については疑問を呈することはできなかった。被告と共犯者の2人が「死亡した」と認めていたことから、公判前整理手続きで、被害者の死亡は事実として審議を進めることになっていた。

 検察の主張は、共犯とされる知人の男の「被告と一緒にやった」という供述だけを頼りにしているように、松尾さんは感じた。

 供述はうそなのか? それとも…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら