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第4章:5

 「主文。被告人を懲役15年に処す」

 2010年10月27日午後4時、仙台地裁。裁判長が、強盗殺人などの罪に問われた被告(当時38)に向かって判決を言い渡した。

 法壇に座っていた裁判員の松尾悦子さん(41)には、被告がほっとしているように見えた。一方、検察官は予想外という表情を見せ、体をブルブルと震わせた。裁判官が「わなわなしていたね」と語ったほどだ。

 後から地元紙の記者などから聞いた話によると、検察側は自信があったらしい。検察優位という見方だったという。そういえば裁判長も「検察は自信があったんですね」とほほえんでいた。

 松尾さんは思う。

 今回の検察側の主張には無理があったのではないか、と。主張の支えだった「一緒にやった」という共犯者の証言が100%正しいとはいえない。もしこれで、被告がクロになってしまうのなら怖いことだ。これを認めてしまったら、1人の発言で人を殺したことになってしまう。それは、言った言わない論だ。

 「今回のような状況で、検察が優位なんて、どうして言えるのだろう? 最近騒がれている冤罪(えんざい)は、こうやって起きるのだろうか」

 評議では裁判長の誘導はなかった。論点がずれると軌道修正はしたが、議論の趣旨や流れを自分の方にもっていくことはなかった。検察官が不満そうな態度を示した「懲役15年」は、頭がまっさらな一般市民が、刑事裁判の原則に立ち返って判断した結果なんだと感じた。

 「やりきった!」

 判決の言い渡しを終えた松尾さんは充実感に包まれていた。推理小説に出てくるような難しい事件を、真剣に読み解いた感覚とでも言えばいいだろうか。「任務終了」。自分の務めを果たしたという思いだった。

 複数の裁判員がその後の記者会見に応じた。松尾さんは記念になると思って参加した。

 「7日間にわたる長期の裁判は…

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