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第4章:6

 強盗殺人罪などに問われた被告に懲役15年という判決を言い渡してから約8カ月。新聞記者から、裁判員を務めた松尾悦子さん(41)に連絡があった。

 「事件は差し戻しになりました」

 松尾さんには意味がわからなかった。「差し戻しって何?」

 聞くと、もう一度、一審から裁判員裁判をやり直すのだという。

 「え~?!」

 ショックだった。

 「みなさんの裁判はなかったことになります」。そう言われて「私の7日間を返してほしい」と思った。

 担当したのは、風俗店経営者(事件当時30)を殺害し、現金5千万円などを奪ったとされる強盗殺人事件。松尾さんら裁判体は、殺人の共謀は否定し、強盗致死罪にとどまると判断、懲役15年の判決を下した。しかし、検察が控訴。仙台高裁が2011年7月19日に、裁判員裁判による一審判決を破棄、審理を地裁に差し戻した。

 一審判決を聞いたときの検察官が不満そうだったので、松尾さんは検察側が控訴するだろうと予想していた。でも、自分自身は「やり切った」感があったので、もし控訴されても、プロの高裁判事が量刑を変えるならば構わない、と考えていた。だから、事件のその後は追いかけていなかった。それが、量刑の見直しではなく、裁判のやり直し、という判断。やりきれなさを感じた。

 差し戻しという高裁の判断は翌12年3月に最高裁で確定。裁判員裁判史上初めてのやり直しになった。高裁判決は「現場で暗黙のうちに共謀が成立していた可能性が濃厚」などと指摘、公判前整理手続きの争点整理が不十分で、審理も尽くされていないなどとした。

 理由を知って、松尾さんは腹が立った。公判前整理手続きの争点整理が不十分と言われても、自分たちはかかわっていないことだ。公判前整理手続きは、裁判官、検察官、弁護人の3者でやったもの。それを問題にされてもどうにもならない。

 それに、「審理が尽くされてい…

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