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 柔道のグランドスラム東京は5日、第2日の男女4階級があり、男子73キロ級は、昨秋のアジア大会王者の秋本啓之(了徳寺学園職)が2年連続3度目の優勝を果たした。同81キロ級で現世界王者の永瀬貴規(筑波大)は準決勝で反則負けし、3位に終わった。優勝は2014年世界選手権王者のチリキシビリ(ジョージア)。

 日本勢同士の決勝となった女子70キロ級は、新井千鶴(三井住友海上)が競り勝って2年ぶりの優勝。同63キロ級は、今夏の世界選手権銅メダルの田代未来(コマツ)が3位だった。

永瀬「これが、五輪じゃなくてよかった」

 不可解な反則負けは逆に、世界王者の圧倒的な地力の高さを際だたせた。

 81キロ級準決勝、永瀬が李スンスを攻め立てる。長い手で組み手争いを制し、得意の大内刈りで何度も相手の重心を崩した。抜群のバランス感覚で今夏の世界選手権を制し、自信みなぎる22歳。危なげない展開が一変する「事件」が起きたのは、2分23秒だった。

 永瀬が右の大内刈りから内またへとつなぐ。相手は、はね上げられた左足で永瀬の上半身をまたぎ、危機を逃れようとした。永瀬は攻めの手を緩めず、畳にはいつくばる相手をすくい投げのように裏返す。一本勝ちでもおかしくないが、審判団は永瀬に「足取り」の反則負けを宣告した。

 国際柔道連盟(IJF)は2年前から立ち技の攻防での足取りを禁じた。タックルのような技を繰り返す選手が増え、組み合って投げ合うという分かりやすい決着が減っていたためだ。

 だが永瀬は足を取っていない。一連の攻撃で左手は常に相手の上着の裾を握っていた。相手が永瀬の体をまたいだことで裾でなく下半身をつかんでいるように見えたが、審判団は判別できなかった。競技終了後、IJFのバルコス審判委員長は誤審を認め、日本男子の井上監督に謝罪した。

 永瀬は判定直後に自身の上着の裾をつかみ、訴えている。「足を持ったと思われたのでアピールした」。とっさでなく、すべてを把握した上での行動だったのだ。ただ、憤りや悔しさよりも先立つ思いがあった。「これが、五輪じゃなくてよかった」。その言葉に、永瀬の実感はこもった。(野村周平)