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 神戸で少年時代を過ごし、戦争で家族を失った作家、野坂昭如さん。ゆかりの地から、悼む声が上がった。

 空襲体験をもとに書かれた小説「火垂るの墓」には、実在の地名や建物が多く登場する。

 その中のひとつ、御影公会堂(神戸市東灘区)。地下食堂を営む鈴木真紀子さん(52)は、野坂さんが年に数回ふらりと訪れてビールを頼み、「元気?」と気さくに声をかけてくれたのを覚えている。「阪神大震災の時は元気づけてくれてうれしかった。ただこの10年ほどは来店されなかった。またお会いして元気な姿を見たかったのに……」

 兵庫県尼崎市の公務員、辻川敦さん(55)は99年から、こうした舞台を巡る「火垂るの墓を歩く会」を開催してきた。「戦争を知る世代が少なくなり、野坂さんは苦々しい思いを抱かれていたと思う。安らかにおやすみください」と語った。歩く会は関心を寄せる人がいる限り続けるという。

 野坂さんは戦後70年となる今年8月、舞台のひとつ西宮回生病院(兵庫県西宮市)の旧病棟が老朽化で取り壊されるにあたり、朝日新聞阪神版に寄稿した。歩く会のように戦跡を訪ね、惨禍を忘れまいとする人々に対し、こうつづった。

 「歩きつづけてください。戦争を忘れないでください。舞台は何も変わっていない」