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 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は11日、過剰演出があったNHK「クローズアップ現代」について、「放送倫理上重大な問題があった」とする勧告を出した。NHKに「報道番組の取材・制作において放送倫理の順守をさらに徹底すること」を求めている。この番組に対し、BPOの別の委員会も11月に放送倫理違反を指摘している。

 番組は、出家して戸籍名を変えることでローンをだましとる「出家詐欺」を報じる内容。番組内で出家を斡旋(あっせん)するブローカーと紹介された男性が「ブローカーではなく、名誉・信用を毀損(きそん)された」と、放送人権委員会に人権侵害の申し立てをしていた。

 勧告の中で委員会は、番組で流された映像は、男性の顔が見えず、体形やしぐさ、言葉の抑揚によっても男性だと特定できるものではないため、「人権侵害に当たらない」とした。

 一方で、事実の正確性について問題があったと指摘。取材協力者からの情報をうのみにして男性についての必要な裏付け取材を欠いたことや、「ブローカーの元には、多重債務者の訪問が後を絶たないといいます」などと男性について虚偽を含むナレーションを放送したことをあげ、「放送倫理上重大な問題があった」と結論づけた。

 男性は「人権侵害が否定されたことは残念に思いますが、放送倫理上重大な問題があったと指摘していただいたことについては、大変感謝しております」とのコメントを出した。

 NHKは「勧告を真摯(しんし)に受け止めます。事実に基づき正確に放送するという原点を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、信頼される番組作りにあたっていきます」とのコメントを出した。

 クロ現問題をめぐっては、自民党情報通信戦略調査会がNHK幹部を事情聴取し、高市早苗総務相が厳重注意した。委員会は勧告でこのことに触れ、「民主主義社会の根幹である報道の自由の観点から、報道内容を萎縮させかねない、政府および自民党の対応に強い危惧の念を持たざるを得ない」と指摘した。

 放送倫理上の問題があるとされた番組などを検証するBPOの放送倫理検証委員会も11月、この番組には「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を出している。その中でも、高市総務相の厳重注意や自民党の事情聴取を批判していた。(星賀亨弘、佐藤美鈴)