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 日本ワインが注目を集めている。国内のワイナリー数は10年間で1・5倍に。政府も10月末に「国産ワイン」の表示ルールを見直し、日本ワインのブランド化を進めている。日本ワインは新たな産業として根を張れるのか。今月11日に国税庁が主催した日本ワインセミナーでは、愛好家ら約80人が各地のワイン生産者や専門家らの議論に聴き入った。

 フード&ワインジャーナリストの鹿取みゆきさんは講演で、ここ数年で異業種からの参入が加速し、特に小規模ワイナリーが増加している現状を紹介。「価値観が多様化し、飲み手も作り手も変化のさなか。SNSの登場で生産者と直接つながる消費者が増え、単なる技術者ではなく『理念』を語る生産者に人気が集まっている」と話した。

 生産者からは、業界の盛り上がりに期待する一方、一過性のブームで終わらせない工夫が必要だという声も相次いだ。

 長野県塩尻市で「五一わいん」を製造する林農園の菊池敬さんは、原料となるブドウの需要が高まる一方、農家の高齢化や後継者不足で地元のブドウが手に入れづらくなっていると指摘。「県内では、農家からブドウを買うのではなくワイナリーが畑を所有する動きが広がる。ただ、日本ワインブームがいつまで続くか分からず、このまま畑を増やしていいものか」

 一方、優良な原料ブドウの産地では、ワインづくりに新規参入する業者がブドウを買い求める動きも活発だ。山形県上山市「タケダワイナリー」の岸平典子さんは、「ワインづくりは農業。業界が活性化するのは歓迎したいが、永年作物のブドウで生計を立てる農家の生活も含め、農業をきちんと守り続ける意識がないと今後のワイン産業は成り立たない」と不安を述べた。

 流通面の強化を求める声もあがった。東京と大阪でワインショップとワイナリーを経営するパピーユの藤丸智史さんは「ワインリストの1ページ目に日本ワインがあってもいいほど、日本ワインの品質は値段と照らしても世界のワインに負けない。『日本ワインだから』と区別せず他国のワインを同じように販売することで、おいしさをきちんと評価してもらうことも必要」と話した。

 現在、国内のワイナリー数は北海道から鹿児島まで約240軒。2000年代の約150軒から新設の動きはここ数年で加速し、14年には9軒、今年は12月までに20軒のワイナリーができた。国際コンクールで入賞するなど、高品質なワインも生まれている。

 日本ワインのブランド化を進めようと政府は10月、国産ブドウのみを原料に国内で製造されたものを「日本ワイン」とする表示ルールを制定した。現在は日本ワイナリー協会などの業界団体が定めた「輸入原料を使ったものはその事実を表示する」といった自主基準があるのみで、産地ごとに基準を定めてブランド化している海外産ワインと比べ消費者の誤解を招くことも多かったためだ。国税庁酒税課の石渡英和課長補佐は、「日本ワインとは何かを明確化し産地を守る要件も整備したことで、日本ワインのブランド価値を高め、産業振興につながれば」と話した。(笹円香)