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 産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対するソウル中央地裁の判決要旨は次の通り。

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 証人の陳述や捜査報告書などを総合すると、(朴槿恵(パククネ))大統領がセウォル号沈没事故当日に男性と一緒にいたということと、2人が「緊密な男女関係」ということは客観的な事実とは合致せず、虚偽だと認定される。

 被告人が(朝鮮)日報のコラムを基礎にこの記事を作成したことは事実と判断される。被告人は他の資料なども確認したと主張するが、「うわさの内容」が事実なのかを確認したのではなく、「うわさの存在」が事実なのかを確認したに過ぎない。

 すべての事情を総合すれば、被告人はこの記事を作成する当時、うわさの内容が虚偽であることを、未必的にでも認識していたと判断される。

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 マスコミ報道による名誉毀損(きそん)が問題となる場合、被害者が公的存在か私的存在か、報道が公的な関心事に関するかどうかなどで審査基準に差があるべきだ。とりわけ政府や国家機関の業務遂行に関わる事項は、常に国民の監視と批判の対象でなければならない。

 こうした監視や批判は言論報道の自由が十分保障されて初めて可能だ。うわさの内容は虚偽であり、うわさを根拠とした大統領の業務遂行に対する批判は妥当だとは言えないが、記事によって大統領である朴氏の名誉毀損がただちに成立するとは言えない。

 しかし、①被告人は記事で単純にうわさや疑惑を指摘しただけではなく、韓国政府がうわさの拡散を阻んでいると印象づけようとした点②うわさの内容自体は公的関心事だとしても、これが結局すべて虚偽だという点③記事にはうわさの他に韓国政治に関する様々な言及があり、大統領職にある人物が国家的緊急の事故が起きているのに収拾に専念せず、私的な出会いを持ったという趣旨が含まれ、私人としての社会的評価を深刻に低下させた点などを総合すると、記事は私人である朴氏の名誉を毀損したと言える。

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 韓国は日本の最も近い隣国で、大統領の言動やセウォル号沈没事故に関するニュースは日本の公的関心事に該当する。記事は、セウォル号沈没事故と関連する韓国の政治状況を伝えようとしたとみられる。

 被告人作成の他の記事で被告人の視点や分析を記載した部分の中には、韓国の国民としては簡単に受け入れがたいものもあるが、日本の新聞社の外報記者として韓国の政治・社会・経済的関心事を日本及び日本国民に伝える役割を遂行したと言えないわけではない。

 記事は虚偽の事実を書いている。しかし、第三者の言葉と報道を引用したものであり、伝聞や推測の形で、うわさの内容が事実とは断定していない。韓国で最も大きな関心事だったセウォル号沈没事故とこれに関する政治の攻防について書き、付随的にうわさの内容に言及したとみられる。

 被告人が記事で批判しようとした、または、日本国民に伝えようとした政治状況の中心対象はセウォル号沈没事故当時の韓国の「大統領」であり、韓国の一般的な女性「個人」とみるのは難しい。記事で書かれたうわさはセウォル号沈没事故に関連して生じたものであり、対象は韓国の「大統領」だ。「私人」としての朴氏についての誹謗(ひぼう)目的は認め難い。

 提出された証拠では被告人に被害者たちを誹謗する目的があったと認めるには足らず、ほかにこれを認定する証拠もない。記事を作成した主要な動機及び目的は隣国の政治・社会・経済的関心事を日本及び日本人に伝えるためだったとみられる。

 よって無罪を宣告する。

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