【動画】大野和士さんインタビュー=高橋敦、瀬戸口翼撮影
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 歌手、演出家、照明家、美術家。歌劇場には、ただならぬ引力を持つアートの専門家が密集する。その真ん中に立ち、すべてを統括する。「強烈な磁場を丸く整え、ひとつの大きな世界を形づくる。オペラ指揮者とはそういう仕事です」

 独裁者として君臨するのではなく、異なる音色を束ね、調和へと導く。現代型の指揮者の筆頭格だ。

 海外でのキャリアをスタートさせたのは1980年代。戦禍のクロアチアでザグレブ・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者(のち音楽監督)に。灯火管制下の演奏会。薄明かりのもと、ひとり、またひとりと言葉少なに集まってくる。指揮台に立つ背中に、聴衆の静かな熱狂がじわじわ押し寄せる。「どんな状況にあっても人間は音楽を求めずにいられない。この確信にずっと導かれています」

 どんなに忙しくても、帰国するたびに各地の介護施設や学校を訪問し、得意の話術とピアノで音楽の世界へと手招きする。「演奏会場に足を運べない人に音楽を届けてこそ、音楽家」との信念は揺るがない。

 昨年、東京都交響楽団の音楽監督に。海外に軸足を置いたまま、欧州での研鑽(けんさん)の「果実」を日本の音楽界に持ち帰り、新たな種をまく日々が始まる。クラシックと日本の歌謡曲に、表現の共通項を見つけては興奮する。「民族の違いを超え、みんなが同じ『何か』に共感できる。音楽には、そんな『何か』がきっとある」(編集委員・吉田純子)

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