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 18歳から選挙で一票を投じることができるようになると、日本の社会は、若者は変わるのでしょうか。「大人とは」ということにも影響は及ぶのでしょうか。東京外国語大学の講義で、学生たちと考えました。朝日新聞デジタルでもアンケート「18歳」を実施しています。その結果は次回、紹介します。

「一票の意味」本人次第

 東京外国語大学(東京都府中市)の世界教養科目の講義で、学生と一緒にフォーラム面をつくる試みをしました。事前に選択肢と自由記述を組み合わせたアンケートを配り、129人が回答しました。

 「18歳から選挙権が与えられることで日本の若者は変わりますか」と問いかけたところ、「変わる」61人、「変わらない」37人、「わからない」30人、1人は無回答でした。

 「変わる」は、大きく二つの見方に分かれました。ひとつは、若者の政治への関心が高まるというもの。もうひとつは、積極的に関わろうとする人とそうでない人の二極化が起きる、という声でした。

 【変わる】

●「選挙権をもつことで一気に社会参加の主体となり、責任も全うしようとするから。教育がしっかりしていれば若者同士での政治についての会話がもっと増えて積極的になる」(1年男子)

●「若者が今以上に政治に関心を持つようになれば自分たちの世代の権利や問題について注意を喚起することができるようになる。同時に高齢世代との格差も知ることになる」(4年女子)

●「選挙を特別なものでなく、一人ひとりがこれからのことを考える場としてとらえるようになる。学校教育で制度だけでなく政治の考え方としての選挙を教える、議論するようになれば、その延長線上に選挙を捉えられるようになると思う」(4年男子)

●「若者を対象とした政治活動を議員が行うようになる」(4年女子)

 【二極化】

●「真剣に考えるようになる人がいる一方で、面倒くさいと遠ざける人も出てくる」(1年女子)

●「人のまねをする人と自ら情報収集する人の両方がいる」(1年女子)

●「しっかり政治を理解して自分の意見を持っている若者は多くない。ほとんどの若者は、いわゆる世論と言われるメディアの偏った情報に流されてしまうのではと思う」(1年女子)

 【変わらない】

●「興味・関心のある人だけが投票へ行くわけだから変わらない」(1年男子)

●「若者世代の政治的無関心が進んでいるのに、選挙権を与えられたところでそもそも興味を示さない」(4年女子)

 変わらないと答えた37人に、理由について四つの選択肢から複数回答で尋ねたところ、「若い世代が強く望んでそうなったわけではないから」(20人)、「選挙権年齢が2歳繰り上がったくらいでは大きな変化にはならないから」(15人)、「大人が変わらないのに、若者が変わると思えないから」(9人)、「成人となる年齢が変わったわけではないから」(3人)の順でした。

 自由記述を見ると、若者の政治への無関心について「彼らにとって自分に関することであるという認識でなかったことが原因だと思う」(1年女子)という指摘や、改善策として「自ら投票することの意味を教える活動が学校などであれば変わるかもしれない」(4年女子)とする声もありました。

大人かどうかは別問題

 アンケートでは、大人の捉え方についても聞きました。選挙権と成人年齢を連動させることについて、「反対」が72人、「賛成」は30人、「どちらともいえない」が27人でした。否定的な考えのなかには「政治参加と飲酒やたばこは別」とする意見が多くみられました。

 では大人になるということは? ほかの大学で学生と議論したときに挙がった項目をもとに「経済的な自立」「親になる覚悟」「孤独に耐えられる」「他人を思いやる心」「社会に貢献できる」の5項目を示しました。それぞれについて大人の条件として「必要」から「不要」まで5段階で聞きました。「経済的な自立」を多くの学生が「必要」と感じ、「社会に貢献できる」「他人を思いやる心」が僅差(きんさ)で続きました。残る2項目は大人の条件として「必要」と「不要」がほぼ同じでした。

 自由記述で共通していたのは、「学生であるうちはまだ大人ではない」という意識です。自らを大人の一歩手前と位置づけているからか「なりたい大人の姿」を真剣に考える様子がうかがえました。「理性的に行動できる」「身近な幸せに気づけること」「多様な価値観を知り、認めることができること」「自由の意味がわかる」といった意見の書き込みがありました。

 「大人とは」を考えるうえで18歳選挙権の導入が何らかの影響があるかどうかも尋ねました。「ある」70人、「ない」40人、「どちらともいえない」16人、無回答が3人でした。

 【影響がある】

●「自分も自国の政治にかかわるのだと考えると、一人の大人なのだと意識するようになる」(1年女子)

●「国民の一人として社会のことを考える、貢献することが大人としての責任になる」(1年女子)

●「自分の意思を伝える行為が可能になったので、今まで考えなくてもいいと思っていたことにも目を向け、自分が意思を伝えることに対する責任も生じる」(1年女子)

●「選挙権を有することで社会と自分を強く結びつける一助となり、社会の構成員だという自覚を持つ機会になる」(2年男子)

 【影響はない】

●「政治や選挙に責任を持つことと、大人になることは違う」(1年女子)

●「大人かどうかを決めるのはその人が持つ権利よりも精神の方が大切だから」(1年女子)

●「極端にいえば子どもも食費などで間接的に税金を払っているし、成人でないからといって政治に無関心でいるのはいけないと思う」(1年女子)

 【どちらともいえない】

●「経済的自立や社会の動きを知っているなど、別のことが備わっていて大人だから」(1年女子)

●「年齢を理由に選挙権が認められただけで、大人として社会へ出ていく力がついているのか大きな疑問が残る」(3年男子)

政治を変えられる実感もてれば

 昨年12月16日の講義では、事前に実施したアンケートの結果を紹介しました。18歳選挙権が「あなたにとっていいことか」との質問で、「いい」「よくない」を押しのけ「どちらとも言えない」が66人と最多だったため、改めて200人近い出席者に携帯電話を用いた即席アンケートを実施。「どちらかといえばよい」「どちらかといえばよくない」から選んでもらうと、約76%が「どちらかといえばよい」を選びました。

 直接、学生に政治との距離について問いかけると、「若い世代に政治の目が向けられていない」という声が返ってきました。「政治家と若者が話し合える場を作り、そこでのやりとりを政策に反映してほしい」という提案もありました。身近な施策としては、無利子の奨学金を増やすことや、国立大の授業料抑制、教育予算の充実などが挙がりました。

 アンケートの「大人の条件」には、「責任」という言葉が多く書かれていました。講義で聞いてみると「相手の期待に応えようとする思いやりが社会的になると責任になる」「社会のなかで上昇していくために必要なこと」「お金を稼いでいることが責任を取るための下地」などの声がありました。

 講義を統括する山田文比古教授は「学生は自分たちの声など反映されないと、政治を諦めているところがある。また親の苦労などを通じて、大人たちの社会が脆弱(ぜいじゃく)だと見抜いている。若者の政治への関心と関与が高まるかどうかは、投票で政治が変わるという実感をもてるかにかかっている。政治の側には、若者に魅力ある政策を提示するなどして政治の役割を納得してもらう努力が必要ではないか」と話します。(北郷美由紀)

     ◇

 18歳選挙権については、法政大学の講義で若い人たちの受け止め方を聞き、昨年5月に紹介しました。ついで、有権者教育を担う高校の先生たちに「政治的中立性」や「高校生の政治活動」などについて尋ねました。さらに今後も、18歳選挙権の影響などについて考えていきます。

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 アンケート「18歳」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施しています。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも受け付けています。

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