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【2013年1月18日 夕刊社会面】

 群馬県の高齢者施設「静養ホームたまゆら」の火災後、無届けだった高齢者施設が有料老人ホームとして自治体に届け出るようになった。厚生労働省の通知を受けた対応だが、居住面積や準耐火構造、防火設備など設置基準を満たさない施設も多い。入居者の生活の質や安全の確保は追いつかないままだ。

 たまゆらは無届け施設だったため、厚労省は2009年3月の火災後、無届け施設に届け出を求める通知を都道府県などに出した。全国の有料老人ホームの届け出は06年10月に1968施設だったが、11年10月には4640施設になった。

 だが、老人福祉法や建築基準法、消防法などに基づいて都道府県などが定める設置基準を満たさない施設が目立つ。届け出が09年3月の183施設から12年12月に306施設に増えた埼玉県では、基準未達成が99施設にのぼる。

 茨城県では、たまゆら火災後、基準を満たさない施設にも届け出を求めるように変わった。担当者は「放置するより管轄下に置きたい」と話す。

 各自治体とも基準を満たすよう求めているが、職員不足が実効性をそいでいる。「以前は個別に訪れたが、施設が増えて難しい」。群馬県の担当者が出向くのは届け出時と施設が年1回出す報告書に変化があった時だけだ。

 施設側も資金不足に苦しむ。東京都内から生活保護受給者数人を受け入れる群馬県の有料老人ホームは1部屋13平方メートルの基準以下。前事業者が撤退後に入った建物のまま届け出た際、県に「建て替える時に基準を守って」と言われたが、「費用や入居者の住まいを考えると、とても改築は考えられない」と話す。

 別の群馬県内の有料老人ホームも1部屋13平方メートルの基準を満たしていない。ようやく約4千万円を工面し、増改築の準備中だ。施設長は「行政の補助を考えてほしい」と訴える。

 (山下奈緒子)

 ●「防火注意を怠った」たまゆら元理事長判決

 「たまゆら」をめぐる訴訟では、火災発生や拡大を予測できたかどうかの「予見可能性」と、防火設備を設けるなど火災を防ぐ「注意義務」が争点となった。

 検察側は、入居者の喫煙黙認や防火設備の未設置などを指摘し、防火管理の注意義務があると主張。弁護側は、施設内は禁煙で、防火対策を施す法的な根拠がないと主張していた。

 判決は、元理事長の高桑五郎被告について「防火管理上の注意を怠ったまま漫然と経営していた」として、予見可能性と注意義務違反を認定。施設は有料老人ホームにあたるとした。一方、元理事の久保トミ子被告については「防火管理の領域で権限がなかった」として無罪とした。

 高桑被告は判決後に記者会見し、「判決にかかわらず、10人の尊い命に何とおわびしてよいか。遺族や関係者におわび申し上げます」と謝罪した。

北関東地方の有料老人ホームをめぐる変化

   届け出施設数  基準を満たさない施設数   無届けの施設数

茨城  40→75   0→20          9→5

栃木  39→68  不明→複数あるが実数は不明 14→3

群馬  80→191 不明→50         46→11

埼玉 183→306 不明→99          4→9

 (データは2009年3月と12年12月現在。各県や中核市の回答を朝日新聞が集計)

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