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第5章:1

 「もう出所されている。いま、どうされているのだろうかと思っています」

 2015年8月末、鹿児島市内であった市民団体「裁判員経験者によるコミュニティ(LJCC)」(事務局・東京)主催の交流会。鹿児島県北部に暮らす山田幸恵さん(32、仮名)は、自分が担当した裁判の元被告について話した。

 ずっと気になっているという細身の山田さんが、一言ひとことかみしめるように心境を語った。「事件のこと、自分がかかわったこと、そして、被告人のこと、忘れないように、と思っています」

 山田さんに裁判員候補の名簿に載ったとの封書が届いたのは、12年の年明け。裁判員制度が始まったことは知っていたが、まさか自分がかかわることになるとは。それでも、「選ばれない」と思った。なぜなら、職場にすでに同じ通知が来た人がいたが、その後何の連絡もなく、そのままだったと聞いていたからだ。

 それから半年以上がたった夏。鹿児島地裁から、9月下旬に開かれる裁判の裁判員候補に選ばれたとの呼び出し状が届いた。

 「来ないって言ってたのに~」

 何とか断れないかと入っていた資料に目を通した。辞退理由として認められるのは、同居の親族の介護をしている、重要な仕事をしていて自分がいないと著しい損害が生じる恐れがある……など。どの項目もあてはまらなかった。正当な理由がなく出頭しなければ10万円以下の過料とも書かれている。

 「行くしかないのかな」

 日程は9月20日から28日だった。当時の仕事は、シフト制のサービス業。「選ばれたときは仕事を休めるだろうか」とは思ったが、それほど深刻には考えなかった。ほかの裁判のことは知らなかったので、拘束期間が長いとも感じなかった。

 ただ、「もし裁判員に選ばれたら責任が重い」と思った。「人を裁くことが自分にできるのだろうか」。そっちの方が気になった。

 被告の人生にかかわる判断をしなくてはいけないのだ。自分はすごく悪いことをしてきたわけではないけれど、人を裁くことにかかわっていいのだろうか。それに、ストレスがかかるかもしれない。悲惨な事件だったらどうしよう。

 「できればやりたく…

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