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第5章:3

 鹿児島地裁で2012年9月20日に始まった傷害致死事件の裁判員裁判。2日目の21日は、被告の男性(裁判当時62)が母親(事件当時82)を車でひいたとされる南さつま市の自宅で現場検証が行われた。

 午前10時、補充裁判員の山田幸恵さん(32、仮名)は、裁判官と裁判員ら計11人でマイクロバスに乗り込んだ。体調を崩す人が出た場合にと、看護師も付き添った。

 鹿児島地裁を出発する際、カーテンをきっちり閉めるように指示された。報道機関の記者がついてきたり、写真を撮られたりしないための方策だという。

 道中は、隣に座った同じ世代の女性の裁判員と世間話をした。途中で休憩を挟んで約2時間、現場近くの公民館に到着。みなでお弁当を食べた。「(報道関係者がいるかもしれないので)窓には近寄らないように」。裁判所職員から注意を受けた。「そこまでするの?」と思ったが、結局、撮影する社はいなかった。

 被告と被害者が住んでいた自宅近くには規制線が張られ、関係者以外は立ち入り禁止になっていた。バスは、その規制線を越えて、自宅の前に滑り込んだ。

 バスの降り口の両脇に、裁判所職員が青いシートを持って立っていた。その間を通って事件現場の玄関先へ。9月下旬というのに、太陽の光は強く、晴れて暑かった。裁判所職員が日傘を差し掛けてくれた。自分で持つと言っても、「いいえ、大丈夫です」。裁判員らに気を使っているのがよくわかった。

 現場は塀とシートで囲まれ、外からは見えないように遮断されていた。弁護人、検察官、警察官、そして被告など計十数人がそこにいた。

 現場は、見取り図で説明されて想像していた広さより、ずっと狭く感じた。

 事件が起きたのは、11年5月。すでに1年半近くがたっている。そろそろ落ち着いているだろうに、たくさんの人が押しかけて現場検証をしていいのだろうか。家族はいまもここに住み、父親は体調を崩して入院していると聞いている。この騒ぎでまた近所に事件のことを思い起こさせてしまうのではないか。山田さんは「申し訳ないな」という気持ちになった。

 現場には、被告が事件のときに乗っていた軽乗用車やダミーの人形も用意されていた。車を動かしながら、被告が母親に気づいた位置や母親の立っていた場所、倒れた場所などを確認していった。

 山田さんらは一人ひとり車の運転席に乗って、見え方などを確認した。被告とは体格も違うが、思ったより、フロントガラスの枠が邪魔になった。身を乗り出さないと見えないかもしれない。見えなかった可能性もゼロではないと感じた。

 庭先に比較的きれいな外灯があ…

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