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第5章:6

 「被告人を懲役3年に処する」

 2012年9月28日。母親(事件当時82)を車でひいて死なせたとして傷害致死の罪に問われた被告の男性(裁判当時62)に対する判決が、鹿児島地裁で言い渡された。

 補充裁判員を務めた山田幸恵さん(32、仮名)は、裁判官と裁判員が並ぶ法壇ではなく、傍聴席の一番前の真ん中の席に座って聞いた。

 傍聴席側から、自分たちがいた法壇をながめるのは不思議な感じがした。

 判決を聞いた被告はこれといった反応を見せなかった。どのように受け止めているのかはわからなかったが、その後控訴はなく、判決は確定した。

 量刑は、前日の27日、1日がかりで議論した。見たくない人は除いて、裁判員たちはこれまでの判決を分析した量刑データベースを見た。家族内の致死事件。山田さんはこれまでの量刑とあまりにもかけ離れた量刑では平等ではないと考えて、データベースを見ることにした。

 それぞれが自分で考えた量刑を紙で書いて出し、その後に話し合った。いろいろな意見が出たが、執行猶予がつかない、懲役3年という結論になった。

 母親をひいた後に被告は助けを求めておらず、その行動は悪質だから当然との見方もできる。一方で、山田さんは猶予をつけて被告が家に戻るのは苦痛かもしれない、とも考えた。処分保留で釈放されたとき、被告は母屋に住まわせてもらえずに、馬小屋に住んでいたと聞いた。刑務所がどんなところかわからないが、田舎で好奇の目にさらされるより、3年ぐらい実家から距離をおいた方がいいのかもしれない、とも思った。

 判決文は当初案では、被告が車でひいても仕方ないと「決意した」などという表現になっていた。言葉のニュアンスが強すぎないかと思った。最終的には「やむを得ないと考えた」などという表現に変わったが、専門家の言葉の使い方はずいぶん違うんだと痛感した。

 判決を言い渡した後、裁判長は法廷で被告をこう諭した。

 「お母さんのために、反省して手を合わせる気持ちでいてください」

 複数の裁判員が被告に伝えてほ…

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