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 リオデジャネイロ五輪を前にした柔道の大きな国際大会である「グランドスラム・パリ」は、男子100キロ超級で原沢久喜(ひさよし)が優勝し、幕を閉じた。日本勢は男子が60、66、90、100超の4階級を制覇。一方、女子の優勝は78キロ超級の田知本愛(めぐみ)だけにとどまった。五輪本番に向け、どんなサポートが必要か、強化委員長として女子スタッフの意見に耳を傾けていきたい。

 今大会は審判の判定基準がより明確になった印象を受けた。1月末に日本の講道館で、各国・地域の監督やコーチ、五輪に立つ審判が参加したセミナーを開き、一本と技ありの違い、指導や反則の基準などについて共通認識を深めた。意義深い試みで、それが生きたと思う。

 審判の判定では「現象を見るか、意図を読むか」で違いが出る場合がある。例えば、グランドスラム・パリでの女子70キロ級準決勝。フランスの選手が田知本遥(はるか)に、骨折などの恐れがある体を捨てながらのわき固めの形に入り、反則負けとなった。

 私は、フランスの選手は偶然、わき固めの姿勢になったように見た。試合の流れや選手の意図を理解しようとする傾向が強い審判なら、故意ではないとして、彼女の一本勝ちとした可能性もある。だが、現象を見れば反則負けと取られても仕方はない。私はこの判定を支持したい。

 審判が試合の流れや選手の意図を瞬時に理解するのは難しい。地域によって競技レベルの差もある。そのなかで、現象を正確に切り取り、明解な共通の基準を適用することはとても大切なことだ。世界の柔道界はこの流れで動いている。

 昨夏に国際柔道連盟(IJF)の理事となり、海外の審判たちと身近に接して分かったが、彼らは非常によく勉強している。「海外の審判は下手」というステレオタイプの批判はお門違いだ。彼らの意識の根底には間違いなく、2000年シドニー五輪決勝の篠原信一―ドイエ戦の「誤審」を、二度と繰り返してはならないという強い思いがある。(朝日新聞社嘱託 山下泰裕)

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