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 「北陸六味」は朝日新聞北陸共通地域面で連載中のコラムです。デジタル版では、過去の回から抜粋して随時配信します。今回は富山出身の俳優・西村雅彦さんです(昨年11月13日掲載)。

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 2年前から年に1度、富山県民の皆さんと共にラジオドラマ作りをしています。

 1、2年目は、小学生から70代のシニアまで3世代が力を合わせて作りました。今年は「セイシュン!」をテーマに富山県内の放送部の高校生、大学生たちと2泊3日の合宿をして、今までよりもさらに一歩踏み込んだ取り組みとなりました。

 学校の仲間と夜を共に過ごすことはまずないという子どもたち。学校内でもクラスが違えば部活以外での付き合いはなく、参加者はかなり不安を抱えての船出となりました。

 合宿といえば、私も高校1年の時に一度だけ運動部の合宿に参加したことがあります。それこそ地獄でした。朝から夕暮れまで炎天下のグラウンドで練習。当時は何事も根性で乗り切れという時代……。何となく想像して頂けるでしょうか。

 合宿所では、その日の練習態度に対し上級生から厳しく問い詰められ、しごきが待っていました。こんなことでチームが強くなるものか。ふて腐れながら理不尽さに耐えた3日間でした。事実その部は決して強いチームになりませんでした。

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 私はその後徐々に練習に出るのが嫌になり、2年になって部を辞めました。

 余談ですが、その頃から私は団体行動に向いてないなと感じるようになったのでした。同じ釜の飯を食った者が持つ連帯感は、つらい体験から得られることもあるのでしょうが、そこにあるのは傷をなめあう仲間意識なのではないかと思うほどに……。

 今回はどうだったかというと、お互いのことを知っているようで知らないそれぞれが合宿中に何を話し、どう過ごしたかは知る由もありませんが、子どもたちの緊張していた表情が日ごとにほぐれ、真剣に物事に当たっていく姿を見られるようになりました。

 本番前にはチームごとに練習をしてから収録に臨んでくれました。こちらの要求通りに出来ない悔しさからか涙する子もいました。仲間は、その子の思いを酌み、遠巻きに見守ります。

 私はと言えば、そんな彼らが何ともいとおしくて、そっともらい泣きしたのでした。

 彼らが取り組んだのは三つの「セイシュン! ストーリー」。彼らは今間違いなく青春ど真ん中にいるようでした。

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 今回ラジオドラマで合宿をした子どもたちは、3日間共に生活したことによって課題にきちんと向き合い、内面的になりがちな己を外に引きずり出すことが出来たように思います。

 たかだか3日間の合宿ではありましたが、子どもたちの成長ぶりを目の当たりにして、集中して物ごとに向き合うことは悪くないなと思ったのでした。

 何より、合宿の中で人々と向き合うことの大事さを思ってくれたことは大きな成果でした。

 1人で無理なら、「仲間と共に悩み苦しみ、目の前にある壁をぶち壊せ!」。(俳優)