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「あー、ニンチ入ってますからねえ」

(父が入居していた施設職員の言葉)

 「夜中にいじわるする職員が1人いる」と父が面会時にぼやいた。そのことを施設にそれとなく相談したら、「そんなことはない」と否定した後に、続いた言葉がこれだった。

 さらに、「お父様、こう言っちゃナンですけど、暴力ふるった時があって、逆に怖がってる職員もいるんです」と。

 そう言われてしまったら、返す言葉がなかった。

 とはいえ、施設で父が暴力をふるっている状況は、あまり想像がつかなかった。だいたい麻痺(まひ)があり、要介護3で、ほとんど動けなかった。暴力? どの程度? どんな状況で?

 確かに父が「拉致されてここに来た」とか、「ここにはあやしい地下室がある」とか、おかしなことを言う時はあった。だが、もともと脳内出血で救急搬送され入院していた病院で、「自分がなぜそこにいるのか、どこにいるのか、納得がいかないと、そういうことはある」ときいたことがある。最近、義父の入院する病院でも、睡眠薬の影響などで「おかしなことを言うのは、よくあります。普通ですよ」ときいた。

 それに、父の話はかなり具体的だった。何をされたか。誰にされたか。認知症の気がまったくなかったとは言い切れないし、もちろん私もそのままうのみにするつもりはなかった。ただ、それを「ニンチ」の一言で片付けて、まともにとりあってもくれないとは。

 父が亡くなった今も、ふと、やりきれない気持ちになる。

◆会社員 40代(女性)

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 朝日新聞文化くらし報道部「介護 あのとき、あの言葉」係

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