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 白樺派を代表する作家、志賀直哉(1883~1971)の原稿や書簡、写真など1万1886点が遺族から日本近代文学館(東京都目黒区)に寄贈された。小説「和解」に描いた父との不和を語る手紙や遺書など新資料も多い。専門家は「これほど膨大な資料が残る作家は他にない。作家研究だけでなく、時代の証言としても貴重」と話す。

 資料は、すでに同館に寄託されていた5736点と、新たな6150点。遺族が高齢になり、後世に残そうと寄贈を決めた。

 新発見になる1914年12月1日の叔父直方宛て未投函(とうかん)書簡には「一言にいえば父上は小生が死んで了(しま)えばいいと思っていられる。小生はそれを知っている」などと書き、父に無断で結婚しようとして対立が深まった状況を説明。「こういう間がらでは如何(いか)に表面上円満に行くにしろそれは要するに偽り」と訴えた。

 また68年8月13日には、原稿用紙に日付と署名の入った遺言を残していた。舞台や映画にするために、作品を幾つも寄せ集めるのは「一切やらせぬよう」と書き、「作品が多くの人に正しく接する事(こと)、一番望ましい」と指示している。

 同時代の文学者らとの交流がうかがえるものも多く、白樺派の盟友・武者小路実篤が70年11月、病床の志賀直哉に宛てて送った書画は、2人の友情をたたえている。他にも代表作「暗夜行路」の原稿には、全集の注記にない推敲(すいこう)の痕跡が多く残っているという。

 同館専務理事の中島国彦・早大教授(日本近代文学)は「どう公開するのか、研究委員会を設けて検討を進めたい」と話した。(高津祐典、板垣麻衣子)