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 「ヒバクシャ・世界の終わりに」「六ケ所村ラプソディー」「ミツバチの羽音と地球の回転」。核をめぐる3部作で知られる映画監督の鎌仲ひとみさん。最新作「小さき声のカノン」では、原発事故による被ばくから子どもたちを守る福島とベラルーシの母親たちの営みを紹介している。「ハハレンジャー」たちが奮闘する福島で、何が起きているのか。

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核めぐる3部作の映画監督・鎌仲ひとみさん

 昨年3月に劇場公開した「カノン」は今も全国で自主上映をしていただいています。3月11日からヨーロッパで巡回上映が始まり、ドイツ7カ所、フランス3カ所、イタリア7カ所。ドイツとフランスの上映は私も出かけていきます。福島原発事故から丸5年、(4月26日で)チェルノブイリ原発事故から丸30年という節目で、ヨーロッパのあちこちでイベントが開かれるんです。「チェルノブイリや福島の原発事故を忘れない、記憶の文化をつくる」ことを目指しています。逆に日本は忘れようとする力が働いていると感じます。

 日本政府が総力をあげて「福島原発事故の影響は心配ない」「結局、被害はそんなになかったんだよ」っていうことを一生懸命に言っている状態だと思う。日本のマスコミでは福島の子どもたちの被ばくが実際にどうなっているのかということをリアルに伝え切れていないと感じます。かつて「原発」がテレビではタブーだったように、今は「被ばく」がタブー化している。だから、「福島はもう大丈夫なんでしょ」という人もすごく多い。マスメディアが報道しないことで、被ばく被害に関する情報がすっぽりと空洞化してしまっています。

 被ばくや核に興味があったわけじゃなく、番組をつくる一介のテレビのディレクターだったり、たまに映画を作ったりしていたんですけれども、たまたまイラクに行ったことがきっかけで、原発とか核とか被ばくをテーマに作品をつくることになったんですね。

 1998年にNHKの番組の取材でイラクに行き、アメリカとイギリスが(91年の湾岸戦争で)大量に使った劣化ウラン弾に遭遇した。イラクの子どもたちのがんや白血病はその影響ではないかと疑われていました。しかも、当時はサダム・フセイン政権に対する経済制裁でイラクに薬がなかった。国連がイラクに抗がん剤を売っちゃいけないというので、子どもたちが死んでいくという状態だったんですね。

 当時、「子どもたちを撮影させて」とイラクのお母さんたちにお願いすると、「世界中がイラクの子どもなんて死んだっていいと思っているんじゃないかしら。だから、薬を送ってくれないんだわ」と。アメリカはピンポイント爆撃で浄水場なんかも全部破壊した。夏には気温が50度になる国なのに、水の消毒剤すら経済制裁で入ってこない。だから、汚い水を飲んでいました。湾岸戦争から7年間で、15歳以下の子どもたち60万人が腸チフスで亡くなったと世界保健機関(WHO)が報告していました。イラクの人たちの間では、世界に見捨てられているという感覚がすごく強かった。

 当時、アメリカは言っていました。「イラクで子どもたちの間にがんや白血病が増えているかもしれないけれども、劣化ウラン弾とは関係ない」。政府の公式ホームページにそう書いてありました。

 私はイラクのお母さんたちが撮影させてくれた病気の子どもたちのことを日本に伝えれば、経済制裁が少しでもゆるんで薬が入って助けられるかもしれないと思って帰ってきました。いろんな社会問題をテーマに番組をつくったんですけど、初めて壁にぶつかった。それが「核」問題でした。

 イラクで私は「カメラじゃなくて、薬を持ってこい」と言われ、すごい無力だった。たくさんの子どもたちを目の前で死なせた。被ばくで子どもを死なせることは許し難い。どうしたら、それを少なくできるかと考え、テレビでは難しかったので、核をテーマに映画を作り始めたんです。あの時、亡くなったイラクの女の子ラシャが「私を忘れないで」とメモを残していった。その言葉は今も私の胸に突き刺さっています。

【被ばくの本質教わ…

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