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第6章:6

 青森市の牧師、澁谷友光さん(52)が裁判員を務めた青森地裁での裁判。全国初の性犯罪事件を裁く裁判員裁判だったことから、被害者のプライバシーの保護にどのような配慮をするのかという点などで、全国から注目を集めた。

 2009年9月3日の第2回公判は、被害者である2人の女性の意見陳述があった。

 午後2時50分、静まりかえった法廷に裁判長の声が響き渡った。

 「被害者のお2人に意見陳述していただきます。Aさんからお座りください。聞こえますか」

 「はい」

 澁谷さんの手元にある小型モニターに映る女性がか細い声で答えた。映像は暗く、顔ははっきりとはわからない。「傍聴席や被告人の席には見えないのでご安心ください」と裁判長が続けた。

 別室で意見陳述する様子をモニターに中継するビデオリンクという方式だ。被害者の負担を軽くするために導入された。

 裁判員や裁判官の手元にあるモニターにだけ映像が流れ、法廷に置かれた大型モニターは切られていた。傍聴席には音声だけが流れた。

 Aさんは、被告の男性(裁判当時22)が19歳のときの06年7月に起こした第一の事件の被害者。アパートの部屋の窓から侵入してきた被告に包丁で脅されて強姦(ごうかん)され、現金1万4千円を奪われたという。

 「いまでも襲われるときのことを夢にみる。ドンという音を聞くと心臓がドクドクする。体がブルブル震える。涙がひとりでに流れてくることがあります」

 Aさんは震えていた。

 あまりの痛々しさに、澁谷さんはモニター画面を凝視できなかった。それでも、裁判員として見る責任がある。自分に言い聞かせながら、全神経を集中させた。

 「買い物をしている家族連れやカップルを見ると、私だけなぜこのような目に遭わなければならないのかと思う。あの日以来、私だけ別の世界にいるような感じです。あのときに殺されていればいいと思ったこともあった」

 Aさんの陳述は続いた。「犯人には、一生刑務所に入ってもらいたい」

 検察官が「ほかに伝えたいことは」と尋ねると、「私が今日ここに来たのは……」と泣き声になった。「世間では(裁判員裁判になったことで)注目されてつらいですが、この苦しみを犯人や裁判官、裁判員の方たちにどうしても伝えたかったからです」

 Aさんの声から、心身ともに負った傷の深さが伝わってきた。

 続いてBさんが陳述した。Bさんは第4の事件の被害者。09年1月。水道管の凍結検査を装った被告に押し入られ、手錠をかけられて強姦され、現金4万8500円を奪われたという。

 Bさんの体も小刻みに震えているように見えた。

 「一番事件のことを思い出すの…

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