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第6章:9

 裁判員裁判としては全国初の性犯罪事件で裁判員を務めた青森市の澁谷友光さん(52)は、たったひとりで2回目の記者会見に臨んだ。目の前には、数十人の記者たちがいた。

 2009年9月4日。判決を言い渡した後、裁判所内ですでに、ほかの3人の裁判員とともに匿名で1回目の記者会見に応じていた。別の場所に移動してのこの日2度目の会見は、午後5時半から始まった。

 実名と顔を出すという決断をしたものの、すさまじいカメラのシャッター音が響くなか、怖さと格闘しながら、マイクに向かった。

 一番印象に残っているのは、「あなたにとって人を裁くとはどういうことでしたか?」という質問だった。

 「えっ、……」と一瞬戸惑った。「被告と向き合って法廷で感じたことは、寂しい思いだった。もうひとりの自分がそこにいるような、彼の不安や寂しさを感じ、隣に行って肩を抱いてあげたいという思いもあった。裁くということは、寂しいことだった」などと答えた。

 判決を言い渡した法廷で、ハンカチをしきりに目元に運び、涙をぬぐっていた澁谷さん。記者からは「どういった涙だったのか」と問われた。

 「今日が一番つらかった。被告がやった犯罪は許せないことだし、その刑にしっかり服してほしいという気持ちがありながら、更生してもらいたいなという思いがこみ上げてきて、涙があふれた」

 自分の気持ちなんてだれにもわかってもらえないと言っていた被告に、自分たちの思いがちゃんと届いたのだろうかということも気になった、と話した。

 次々にいろいろな質問が飛んでくる。心と頭を整理しながら答えていくのは、結構疲れた。

 でも、「質問されることは悪くない」と思う。質問されて話しているうちに、裁判員を務めた時間をたどっていく形になり、ある意味、自分の考えや気持ちが整理されていった。

 たとえば、被害者について質問されたとき。思い出したことがあった。

 国がもう少し被害者を手厚く支援できないのだろうか、ということだ。

 第一の事件の被害者であるAさんは、経済的な問題で引っ越しができず、被害にあった同じ部屋で生活している、と言っていた。その話を法廷で聞き、「一日も早くその部屋を出たいというのが心情なのに、どうして?」と疑問に思ったことが頭に浮かんだ。

 被害者が引っ越しするための支援をしたり、半年ぐらい休養できるようなシステムだったり、カウンセラーをつけたり、といったことができないのだろうか。その後に、徐々に社会に復帰させてあげるようなことができればいいのに……。

 法廷でそう思ったことを、改め…

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