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 新年度が始まり、PTAへの入会や担当決めの季節がやってきました。フォーラム面では昨年5月、朝日新聞デジタルでのアンケートなどをもとに、「PTA どう考えますか?」を5回にわたって展開しました。あれから約1年。PTAは変わったのか、変わらなかったのか。当時、改革を志した人たちを訪ねました。

改革で脱「いやいや」

 「より多くの保護者が参加しやすいように変える努力が必要だと思います」。1年前、こんなメールをフォーラム面に送ってくれたのは、名古屋市内の児童約400人の小学校でPTA副会長を務める自営業渡辺智久さん(45)です。

 2011年度から副会長を2年、会長を2年、そして昨年4月から再び副会長。09年春、長男が入学するとすぐに、妻が投票でPTAの学級委員を務めた際に感じた「いやいややっている」という雰囲気に「変えないといけない」と決意しました。

 自営業ということで声をかけられて副会長になって、目のあたりにしたのは「これじゃ変わらない」という雰囲気でした。夜10時過ぎまで続く打ち合わせ、強制参加の委員会、欠席者への不平不満、週末の講習への動員――。疑問を感じるたびに「見直しましょう」と提案しましたが、「いままでこうやってきた」などと反論され、他の役員との関係がぎくしゃくしてしまいました。そこで最初の副会長の2年間は、「会長になったら改革すべき点」をメモし続け、改革に同調してくれる仲間を探し、会長になった13年春、仲間に本部役員をお願いしました。

 会長になると、計画を次々と実行に移しました。年6回の常任委員会などへの参加は、強制から「希望者だけ」という形に変えました。PTA運動部の応援への動員もやめたところ、「今まで通りに」という声もありましたが、「週末は子どもたちと過ごす時間。無理強いするのはおかしい」と説明しました。

 「いやいや」の象徴だった新年度の学級委員決めの方法も変えました。「仲のいいグループで一緒にできるならやりたい」という声もありましたが、学級ごとに2人という定員が阻んでいました。そこで、昨年度の委員決めから、同じ学級の仲のいい保護者同士が立候補しやすいよう、学年単位の選出に変えました。委員の数が多い学級もいない学級もあるそうです。

 朝日新聞にメールをくれたのは、改革のための基礎づくりを終え、再び副会長に就いた昨年春でした。その後、運動会では「おやじの会」がパトロールなどを受け持ち、学校の草刈りや餅つき大会の準備も手伝いました。今年3月の新年度の学級委員決めは、5学年32人中26人が立候補で決まりました。

 今、気をつけているのが「出来る人が、できる範囲で」ということをお互いに尊重すること。会議の欠席者の陰口を言ったり、不公平感を口にしたりしないよう、役員や学級委員に語りかけているそうです。「いまはほとんどの保護者が働いています。時間をPTAに充てることがいかに大変かをみんなが認め合わなければいけない」と渡辺さんは力説します。(田中聡子)

訴え1年、届かぬまま

 1年前、「PTA総会で勇気を出して発言しました」とメールをくれた兵庫県三田市の看護師和田知恵さん(38)は、新5年生の長女がいます。3年前、学年代表委員になった経験から、活動量の多さに疑問を抱いてきました。昨年4月の定期総会で、質疑応答の時間がなかったため、「一般会員の意見を伝える場がない」と訴え、当時の会長は「意見箱の設置を検討する」と答えてくれました。

 その後、一般会員としてPTA活動にどうかかわってきたのか。今年3月、改めて和田さんに話を聞きました。意見箱はまだ設置されていませんでした。昨春、会長が交代し、「必要ない」との考えに変わったからです。和田さんは、一般会員を対象としたアンケートの実施も求めていましたが、昨年12月の回答は「大きく見直す点が見当たりません」。

 PTA規約には、入退会の定めがなく、「保護者は全員がPTA会員です」というプリントを配られるだけ。総会後、規約の改正を提案しましたが、実現しませんでした。

 学級担任と保護者が話し合う大事なクラス懇談会。毎年4月初めは、懇談会後の委員選出会を欠席すると、抽選でクラス役員になってしまう可能性もあるため、保護者の出席率は高くなります。ところが、2回目以降は、「熱心な保護者とみられると、来年の役員にされてしまう」と心配する人が多く、数人しか出席しません。「PTAは子どものためといいますが、本当に子どものためになっているのでしょうか」

 小学校の児童数は減少しているのに、活動量は昔のままだといいます。時間的な負担が大きいため、フルタイムで働いている人が、本部役員になることは難しい状況です。PTA会長は、自営業の男性が続いています。「PTAを改革するには、本部役員になる方がいいのだけど、なかなかそうすることもできません」

 PTA活動に参加すると、ほかの保護者とおしゃべりもできて、楽しいと感じることもあるといいます。決してPTA活動を否定しているわけではありません。

 現在の活動量に疑問を感じている保護者もいますが、これまでの大変さを思うと、一緒に改革を呼びかけるのもためらわれます。「この1年間がんばって、何も変わらなかった。本当に疲れました」(杉原里美)

全国組織もスリム化を議論

 これまでPTAの意義を強調してきた「日本PTA全国協議会(日P)」も、変わりつつあります。

 今年3月に日Pが刊行した「PTA活動運営事例集」。「がんばって活動しているPTA」の紹介だった昨年までの事例集にはない、スリム化などの「組織運営改革」に取り組んだPTAが数多く紹介されています。働く親の割合が大きくなる中、前例踏襲で昔のやり方のままのPTA活動は難しくなるケースが相次ぐようになり、そんな時代の変化に対応するための方向転換のようです。

 本にはもう一つの意味があるといいます。これまでの本は、各地のPTA関係団体やPTA関係者など内部向けに売られていましたが、今回からは「稼ぐ」ために書店やネットで一般向けに販売します。

 少子化が進み、日Pの14年度の会員数は約851万人で、06年度よりも約87万人減りました。会費収入は今後も減る方向です。11年度に児童・生徒1人当たり年額6円から10円に値上げしましたが、「いつまでも値上げに頼るわけにはいかない」(事務局担当者)と判断し、本の販売に踏み切ったということです。

 昨年8月からは、無駄な事業の見直しについても議論が始まりました。年に1度、全国のPTA関係者が集まる全国大会や調査活動の縮小が議題にあがっているそうです。

PTAとは

 PTAは入るのも出るのも自由な「任意団体」ですが、学校活動との境目があいまいだったり、安全パトロールなど地域活動と一体化していたりして、保護者は入会を拒みにくいのが実情です。

 毎年春の悩みなのが、各学年やクラスの担当決め。「くじ引き」「在校中のポイント制度」「一人一役」など「公平な負担」をうたうローカルルールを持つPTAも多いのですが、全員参加を前提とすると強制性をはらんでしまいます。

 おやじの会など父親の参加も増えているものの、全国的には母親が活動している割合の方が大きい。しかし、上部組織になるほど役員の男性比率が高くなります。多くの公立校のPTAは、保護者が払った会費の一部を上部団体に上納。PTA大会や講演会に保護者らを動員しているところも少なくありません。

 働く母親の増加、子ども数の減少などの変化を受け、業務の見直しや組織のスリム化など改革を希望する声もやみません。ただ、会員が毎年入れ替わって問題意識が継続しないこともあり、PTAで合意形成にこぎつけるにはさまざまな困難な要素を伴っています。(堀内京子

前例踏襲、楽だけれど

 小学生の父親として副会長を務めた縁で、昨年と今年のPTA企画のデスクワークを担当しました。PTA活動は前例踏襲が楽だし、だからこそ改革が難しい。3年の経験でそう実感しました。学校の記念誌をつくる機会があり、レイアウトを大胆に変えたところ、「次につくる人がたいへん」といった意見もありました。たしかに前例を壊すと、困る人がいるのも事実。ただ、自分の場合は気の合った仲間が背中を押してくれたから、変えることができました。結局、PTAは人の集まり。巡り合わせ次第のところもあります。読者のみなさんからのお便りも、そんな指摘が少なくありませんでした。どうすれば、うまくいくのか。みなさんのご意見をお待ちしております。(田中光)

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 担当の決め方など、PTA活動で改善したことはありませんか。みなさんの体験をお寄せください。メール(asahi_forum@asahi.comメールする)かファクス(03・5541・8259)、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞オピニオン編集部「PTA」係まで。

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