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 「北陸六味」は朝日新聞北陸共通地域面で連載中のコラムです。デジタル版では、過去の回から抜粋して随時配信します。今回は富山出身の俳優・西村雅彦さんです(4月8日掲載)。

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 大河ドラマ「真田丸」。放送はまだまだ続きますが、私が演じた室賀正武(むろがまさたけ)は、3月20日の放送で真田昌幸一派の返り討ちに遭い、めった刺しにされ、あえなく姿を消しました。

 「室賀ロス」の人が結構いるんですよと事務所のスタッフに言われ、ネットで調べてみました。すると、「私はムロガー」「死なないでー」「『黙れ、小童(こわっぱ)!』聞かせてー」などと盛り上がっているのを見て、大変驚きました。

 「黙れ、小童!」というのは、室賀が、大泉洋さん演じる真田信幸を一喝するせりふです。

 初めて言ったとき、共演の堺雅人さんや大泉さんから「この言葉ははやりますよ」と盛んに言われ、むしろ芝居がよくなかったのではないかと不安に思ったりもしました。

 放送後、色々な人から「黙れ、小童!」と言ってとか、「あのせりふシビれる」とか言われ、お二人の読みが当たっていたことに気づき、さすが、今まさに時代の波に乗っている人は流行に敏感なのだと感心させられたのでした。

 何はともあれ、大勢の方に室賀正武を愛していただけたことは、役者冥利(みょうり)に尽きます。役者をやってきてよかったと改めて思いました。

 まだ室賀正武としての撮影が続いていた時期のある日、スタッフから興奮したメールが送られてきました。

 そこには「今事務所が大変なことになっています」とだけ。何事かと思っていると、その日、事務所に室賀家の子孫の方が訪ねて来られたというではありませんか。

 大河ドラマにご先祖様が登場する、その役を西村が演じると知り、ごあいさつに来てくださったとのこと。その方は、室賀家の第1分家の奥様でした。

 本家や第2分家の方がいらっしゃる場所、現在の菩提(ぼだい)寺のことなども教えてくださったそうですが、長野県上田市の前松寺に室賀氏のお墓があることは私のブログを見るまでご存じなかったそうです。

 歴史上ほとんど無名に近かった室賀正武。子孫の方からいただいた「室賀氏の歴史」という本の中ですら、彼のことはほとんど取り上げられていません。暗殺されたということにより、意図的に触れられていないのではないか、とさえ感じます。

 しかし結果がどうであれ、彼は精いっぱい己の人生を生き抜いたあっぱれな男。そんな彼を演じられたことを、私は誇りに思います。

 先日、別のドラマの撮影の際、ハイテンションでせりふを言っていたら、監督から「西村さん、別の現場の役を引きずってます」と指摘されハッとしました。

 「室賀ロス」なのは、ほかの誰でもなく、私自身なのかもしれません。(俳優)