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 上野動物園(東京都)の前園長、小宮輝之さん(68)が、動物園に勤めていた約40年間に撮り続けた写真をふんだんに使った図鑑「くらべてわかる哺乳類」を出版した。全身写真が少ない鯨類には、動物画の故薮内正幸さんの絵を載せている。

 小宮さんは子どもの頃から動物園で働くことに憧れ、1972年に多摩動物公園の飼育係に。多摩と上野動物園の飼育課長をへて、2004~11年に園長を務めた。その間、飼育係にしか撮れない動物の顔のアップ写真や夜の姿などをカメラに収めてきた。

 「くらべてわかる哺乳類」には、国内で生息するか存在が記録された全ての哺乳類を掲載している。亜種を含めて195種に及ぶ。写真は小宮さんが撮ったものが3分の2を占め、奥多摩の廃線のトンネルにいたコウモリの集団、長崎・対馬のツシマヤマネコ、八王子市の自宅庭のドブネズミなど、撮影場所は動物園内にとどまらない。

 モモンガとムササビ、アライグマとタヌキ、アナグマの違いや、雪の上に残った足跡の違いで動物を見分ける方法なども、絵と写真で分かりやすく紹介した。

 絵を担当した3人の画家のうちの1人が2000年に60歳で亡くなった薮内さんだ。無類の動物好きで小学生の頃から動物学者と文通し、動物園に通い詰めた。福音館書店に入社し、骨格から学び、どのポーズでも正確に絵を描くことができたという。

 薮内さんと親しくしていた小宮さんは葬儀後、薮内さんの妻でフリーライターの戸田杏子さんから「夫の絵は残っているから、機会があったらぜひ使ってね」と言われたという。杏子さんも06年に亡くなり、約束を果たせずにいたが、昨年鯨の絵を探しているときに杏子さんの言葉を思い出した。

 薮内正幸美術館(山梨県北杜市)の館長を務める長男の竜太さん(46)は鯨やイルカの精巧な絵の使用を快諾。「動物園一筋でやってきた小宮さんに認めてもらい、父が本でご一緒できて光栄です」と話す。

 小宮さんは「10年以上たってやっと約束を果たせた。動物にかかわる人には『おっ』と思ってもらえるのでは」と感慨深げに話す。山と渓谷社、税抜き1600円。(高橋友佳理