[PR]

 経営者の重要な仕事の一つは、後継者を見つけ、育てることだ。だが、経営者が偉大すぎると次世代に甘えが生じる。自信を持ちにくくなり、リスクを負うこともしなくなってしまう。

 セブン&アイ・ホールディングスの人事を巡る混乱からは、そんなグループ内の空気が読み取れる。

 鈴木敏文会長の功績は言うまでもない。日本になかったコンビニを持ち込み、社会インフラともいえる小売業に育てた。コンビニ銀行、公共料金の取り扱い、おにぎり、おでん……。セブンが開発したサービス、商品は日常生活に深く入り込んだ。

 会員77万人を抱える弁当宅配もそうだ。2000年の事業開始時は宅配業者に配送を委託していた。なかなか数字が伸びなかったが、「店のオーナー、従業員に配ってもらって、彼らに手数料を払ったら?」という鈴木氏の一言で会員は急増した。

 海外出張中も日々の売上高をチェックしていた。成田空港に到着すると、本社に必ず立ち寄り、留守中のことを確認した。心配性だといえばそれまでだが、細かなところまで目を凝らしていた。

 こうした日々の積み重ねが頼られる経営トップ、それに頼る次世代の構図をつくってしまったのではないか。鈴木氏は日頃から「新しい提案が上がってこない」とこぼしていたという。一方、次世代が鈴木氏に直言することもなかったと聞く。

 最近は、高齢の鈴木氏の体調不安説が幾度か流れた。昨年末も、体調を崩して緊急入院したという。そこに「物言う株主」の米投資ファンドからの改革要請も重なった。今回の人事騒動は、鈴木氏のそうしたことへの焦りからと見てもおかしくない。

 セブン&アイの経営は、カリスマと従者という極端な関係で成り立っていた。それは崩れた。新たにグループをまとめる求心力は見えない。次のトップに、いきなり大きな課題を残したことになる。(編集委員・多賀谷克彦