【動画】入学式で校歌を歌う広島商野球部の新入部員たち
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しまっていこー 広島商

 広島商の新入部員が最初に覚えるのは校歌だ。

  ああうるわしき厳島(いつくしま)

  潮にたてる大鳥居

 甲子園で何度となく斉唱されたフレーズを、入学式までに暗唱できるようにする。もっとも、メロディーは二の次だ。

 「腹から声を出すんじゃ」「体を反れば、もっと大きな声が出る」

 1年生指導係の新田渉(わたる)と池田樹(いつき)(ともに2年)の教えは明快だ。

 1日に初集合し、「まずは広島商野球部の基本を学ぶ」と檜山忠監督。だから指導係には真面目でリーダーシップのある2年生が選ばれる。夏までは自分の練習よりも、1年生の指導を優先することになる。

 校歌とともに、最初に教えるのがあいさつ。「おはようございます」「失礼します」。お辞儀の角度にも気をつける。「つま先より2メートル前を見るんじゃ」と池田。大きな声であいさつするよう指導するが、「校舎の1階だけはボリュームを抑えろや。職員室があって会議も多いけんな」

 「はい」の返事は「は」と「い」を短く発音する。挙手する際は、手のひらを内側に向けて右手を真っすぐ挙げる。「相手に親指が見えんようにするんじゃ」と新田は指導する。

 そして、校歌。これもあいさつや返事と同様に、自分の一番大きな声で歌うように教える。今年の入部希望者は36人。2日から指導を始め、全員で歌うだけでなく、一人ひとり歌わせてチェックもした。

 入学式は7日。ふつうの新入生は校歌を覚えていないものだ。「ええか、野球部が手本を見せるんじゃ」

 迎えた入学式当日は、全国的にあいにくの雨。大粒の雨が屋根をたたく体育館に、箏曲部の奏でる琴の音色が広がる。厳かな雰囲気で、新入生の入場だ。山田剛司校長の式辞などがつつがなく終わり、いよいよ最後に校歌の演奏だ。

 新入生が立ち上がる。各クラスに散らばった丸刈り頭の36人。一般生徒と比較すると、両足の開き幅がかなり広い。

  ああ、うるわぁしき、厳島ぁ~

 36人の大合唱、いや大絶叫に、新入生も保護者もあっけにとられている。36人はお構いなしだ。「広商の野球部魂」を、みんなに見せなければならない。

 新入部員たちは校歌を2番まで見事に歌いきった。いや、がなりきった。

 でも、赤沢雄祐・副部長はちょっぴり不満顔だ。自身も野球部OBでもある。

 「あいつら、1番の終わりぐらいで(伴奏に)合わせにいったでしょ。もっとズレんといけんよ」

 とにもかくにも、力強い第一歩を踏み出した。(編集委員・安藤嘉浩