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 新国立競技場の旧計画案のデザイン監修を手がけた建築家のザハ・ハディドさんが先月31日、65歳で急逝した。早くから才能を評価していた建築家の磯崎新(あらた)さん(84)は今、憤りを感じているという。その思いを語ってもらった。

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 競技場問題などをまとめた『偶有性操縦法』(青土社)を出したばかりの時に、ザハが亡くなるとは思いもよらなかった。いや驚いただけでなく、憤っているという表現を使いたい。旧計画が白紙撤回された後に行われた2度目の公募にも、彼女は参加しようとしたが、施工業者の協力を得られなかったという。大げさにいうと、日本の排外主義がザハを追い出したように思えたのだ。

 1983年、香港の山上に高級住宅などを建てる設計競技の審査員を務めていた私は、落選しかけていた中から彼女の案を見つけて推した。ロシア構成主義に通じるものがある一方、床が空中にばらばらに浮いているような全く新しい表現で、1等になった。あのときは出身も性別も知らなかったが、あの案が彼女の始まりだったと思う。

 我々の世代は構造や設備の合理性の上に表現があったが、ザハはまず感覚的な表現があって、それを合理化していた。建築というより、イメージによるデザインの能力といえた。

 香港の例をはじめ実現しないケースが続き、長く苦労してきた。多くは、斬新な案のままクライアントに妥協しなかったためだろう。その後コンピューターによる設計が汎用(はんよう)化され、ダイナミックな造形を支える構造計算が可能になり、彼女はさらにイメージを広げていった。その強く象徴的な造形が、今度は政治家や市場を重視するクライアントに採用され、少しずつ実現するようになった。

 彼女のデザインには多くの追随者がいたが、誰も彼女ほどの個性を持って建築を実現させた人はいない。

 アラブ出身の女性という、二重…

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