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 熊本県を震源とする強い地震に見舞われた被災地では余震が続き、睡眠もままならないのではないでしょうか。避難生活では慣れない環境の中でストレスも増し、睡眠不足に陥りがちです。眠りの専門家に心構えを聞いてみました。

 「被災直後の不眠症状は、身の回りに生じた危機に対処するための正常な生体反応です。あまり心配は要りません」

 こう話す国立精神・神経医療研究センターの三島和夫医師は、大切なポイントとして「眠れる時に眠る」という開き直りを挙げた。

 「夜中に周りと一緒に眠らなくてはならないという思い込みは、かえって不眠を悪化させる。逆に、昼間にうとうとと眠れることがある。昼でも夜でもいいので、眠れたという体験を積み重ねて下さい」

 床に入って寝付けない時は「今は体が眠りを求めていない」ととらえ、自然な眠気が来るまで呼吸をゆっくり整え、静かに横になるだけでいい。眠ろうと羊を数えるのは禁物だ。

 「不眠があっても淡々と受け止めていれば、日々の生活をこなすうちに多くの方は眠れるようになっていきます」

 被災前から不眠があり、睡眠薬を服用している人はそのまま服用を続けて良いが、自己判断で増量するのは控えるよう求める。睡眠薬代わりにお酒を飲むのも厳禁。「若干寝付きが良くなる人もいるが、じきに効果が弱くなる。逆に深い睡眠を減らしてしまいます」

 避難所での睡眠の質を少しでも良くするには、どうしたらいいのか。日本大学医学部の内山真教授(精神医学)は、阪神大震災で避難所生活をしながら診察にあたった経験から、二つのポイントを挙げる。

 一つは、できるだけ温かく感じられるような工夫だ。手足が冷えるとぐっすり眠れない。気温が低ければ、靴下や手袋を着けたまま眠ってもいい。

 もう一つは、日中は外に出て太陽の光を浴びるなど、昼夜のメリハリをつける工夫をすることだ。そうすれば、自然な眠気につながりやすい。被災前の生活のリズムになるべく近づけていくと、さらに眠りやすくなるという。

 それでも一斉消灯のタイミングでは、目がさえて眠れないこともある。そのまま眠ろうと焦ると不安が増すだけだとし、「床から出て少し明るい場所で休憩する方がいい。眠れないのが自分1人ではないと知ると、ほっとします」と助言する。これには、避難所の一角に明るい場所を作るという環境整備も必要だ。(井上充昌、兼田徳幸)

     ◇

被災直後の睡眠のポイント

◇不眠症状は「正常」な反応

 →多くは急性ストレスが原因。過度な心配は不要

◇眠れる時に眠る

 →夜寝にこだわらず、眠れたという体験を積み重ねる

◇体は温かくして就寝

 →靴下や手袋を着けるなど、手足を冷やさない

◇昼夜のメリハリをつける

 →日中は太陽光を浴びるなど、生活リズムを意識

(国立精神・神経医療研究センターの三島和夫医師、日本大学医学部の内山真教授への取材から)