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 16日未明の地震では、熊本県南阿蘇村にある学生アパート6棟が倒壊し、近くの東海大学農学部に通う学生3人が犠牲となった。

 県警は17日、その一人で東京都出身の2年生、大野睦(りく)さん(20)の身元を確認した。アパートで隣室に住んでいた1年生の中島勇貴さん(18)は「無事だと願っていたのに……」と声を震わせた。

 アパートの倒壊後、中島さんはがれきに埋もれ、身動きがとれなくなった。何人かのうめき声が聞こえてきたが、大野さんの声は聞こえない。「外出しているか、気を失っているんだろう」。そう自分に言い聞かせた。中島さんは救出されたが、その後、大野さんの遺体が運ばれていった。

 中島さんはこの春に入学したばかり。「学校は慣れた?」「授業はどう?」。学科の先輩の大野さんは、よく声をかけてくれた。教科書も譲ってもらい、新入生を歓迎する食事会も開いてくれた。「明るくて親切な先輩でした」

 大野さんと同じサークルの2年生の男子学生(20)は「全然実感がわかない」と語る。大野さんは授業の予習をよく手伝ってくれた。ずっと農学部志望で入学した大野さんは、勉強はできたが、偉ぶるところはなかった。「2人とも20歳になったら、一緒に酒を飲もうな」。そう話す大野さんの笑顔が忘れられない。「12日が僕の誕生日でした。約束を果たさないうちにこんなことになり、残念としか言えない」

 2年生の仁平悠里子さん(19)は、大野さんら仲良しの5人で無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループを作って連絡を取り合い、いつも一緒だった。授業後に互いの家を行き来しては、映画を見たり、大学生活のことを話したり。夜通し話したこともあった。「笑いにあふれる楽しい時間をくれた。おしゃれで社交的で、みんなに好かれていました」。そう話すと、あとは言葉にならなかった。

 熊本市の遺体安置所には17日、東京から大野さんの両親が訪れた。両親は2時間ほど大野さんのそばで泣いていたという。大野さんの兄(22)は弟の安否情報をツイッターで募ったが、願いはかなわなかった。「気のいい、愛される性格の弟でした」

 亡くなった3人の学生は、いずれも押しつぶされたアパート1階の自室で見つかった。4年生の脇志朋弥(しほみ)さん(21)は、鹿児島県の高校を卒業して東海大に入学。最近は論文作成や研究で忙しく、夜遅くにアパートの食堂で食事をとることも多かった。

 地震発生の数時間前の15日夜。アパートで大家の女性(66)が「ちゃんと食べんといかんよ」と声をかけると、「頑張るよ」と笑顔で応じたという。「食事の準備を手伝ってくれる、とても優しい子でした。これから社会に羽ばたこうとしていたのに。自分の子どものように思ってきたから、つらくてたまらない」。そう言うと、手で顔を覆った。

 脇さんが所属するバレーボールサークルの後輩の石田勇以(ゆうい)さん(20)は「初心者の僕にも丁寧に教えてくれた。身近な先輩がこんなことになるなんて、胸が痛いです」と話した。

 17日朝、1年生の男子学生は、避難先の熊本県高森町の中学校で、携帯電話のニュースを見て、同級生の清田啓介さん(18)が亡くなったのを知った。「とても気さくで、話しやすかった。犠牲になったなんて、まだ信じられません」

 この春に入学した直後、どのサークルに入るか迷っていた時、たまたま同じサークルを見学したのをきっかけに、仲良くなった。清田さんは14日、「写真部に入ろうと思う」と話していたという。男子学生は「これからもっと仲良くなれると思っていたのに、悔しいです」と話した。