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 好奇心旺盛な22歳の正岡子規が漱石と知り合った頃、「筆まかせ」という随筆の中で、日本語の人称代名詞について書いている。漱石作品でも特に一人称は、「坊っちゃん」の「おれ」の語り口、「こころ」の先生が半生を書き記す時の「私(わたくし)」の語調など、「僕」や「わたし」とは違った印象だ。子規は、一人称を集め、「口にていふ方」として「ウチ」「アタシ」「自分」など34語、「筆にて書く方」として「我」「小生」など24語を書き記す。「我輩」は、「口にていふ方」の終わりの方に出て来る。この作品では表記は「吾輩」だが、猫が快気炎で話し続けると考えると、さらに面白さがわいてくる。

 それにしても、自分を「吾輩」と名乗るこの雄猫は、いつ捨てられ、主人の家に辿(たど)り着いたのか。「どこで生れたか頓と見当がつかぬ」どころではなく、いつ生まれたかもわからず、いつ「吾輩」などと言うようになったのかも定かでない。訳知りの語りからは、生まれて何年たったといった物理的な時間を無視した、超越的な、ある意味で万能な語りの主体が浮かび上がる。

 実は、漱石が「吾輩」という一…

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