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 まちづくりこそ、2025年問題突破のカギ――。そんな思いを強くさせる地域が埼玉県の北東部にある。幸手(さって)市と杉戸町では、住民と医療者が力を合わせて高齢者を支え、「幸手モデル」と呼ばれている。

 12日午後4時過ぎ、幸手団地のコミュニティカフェ「元気スタンド・ぷリズム」を訪ねた。昭和歌謡が流れる店内には、埼玉県の高齢化率のグラフが貼られ、メニューブックには介護予防の情報が差し挟まれていた。「ここで友達と話し、たくさん笑って帰ると元気になれる」と常連の70代女性。毎月第2木曜日には「暮らしの保健室」が開かれ、「コミュニティナース」の佐藤尚子さん(62)と秋元里美さん(59)が健康相談にあたる。

 店主の小泉圭司さん(48)はかつて、スーパーに勤めていた。店内のベンチにずっと座っている高齢女性が「行くところがないのよ」と言うのを聞き、ショックを受けた。自身も地域に居場所がないことに気づき、脱サラ。カフェ以外にも、高齢者が助け合う有償ボランティア「幸せ手伝い隊」を運営する。人工透析を受ける女性を世話する隊員の永井静江さん(67)は「報酬だけでなく、感謝を得られるのが何よりうれしい」と話す。

 幸手では、小泉さんのようなまちづくりのキーパーソンを「コミュニティデザイナー」と呼ぶ。ボランティア団体やホテル、薬局など、住民が集うところにコミュニティデザイナーが数十人いる。

 コミュニティデザイナーを「発掘」したのは、在宅医療連携拠点「菜のはな」の責任者で、東埼玉総合病院地域糖尿病センター長の中野智紀医師(40)だ。

 ぷリズムである日、「近所の70代男性が最近、暴力的だ」と話題になった。小泉さんはコミュニティナースに相談。中野医師の助言で、ナースと小泉さん、団地の管理人らが一緒に自宅を訪問し、精神科に入院するように取り計らった。

 「市民同士がつながっていれば、困ったときにお互いを支え合えるし、気になる高齢者の情報も集まりやすい。我々医療者は、いざというときに市民をバックアップする存在なんです」と中野医師。暮らしの保健室は今、コミュニティデザイナーの会社や自宅、自治会館などに27カ所ある。

 幸手市と杉戸町は東京のベッドタウンで、合わせて人口約10万人。高齢化率はそれぞれ30%、29%と高めだ。埼玉県の10万人あたりの医師数は152・8人で、全国で最も少ない。幸手市と杉戸町を含む利根医療圏は114・6人で、さらに少ない。幸手モデルが生まれた背景には医療資源の乏しさもある。

 神奈川県にもベッドタウンは多くあり、高齢化した郊外が広がる。地域の情報が集まる人や場所と、医療・介護のプロがつながって問題解決を考えていく方法は、これからますます求められていくだろう。(佐藤陽)

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