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 熊本県などでの一連の地震で、一般の避難所での生活が難しい高齢者や障害者ら災害弱者を受け入れる「福祉避難所」が大幅に不足している。支え手をうまく確保できず、事前に自治体と結んでいた協定が生かされていない形だ。

介助の家族も一緒に避難生活

 今回の震災で福祉避難所の一つになったのが、知的障害者ら約130人が入所する熊本市東区の福祉施設。介助する家族も一緒に避難生活を送っている。

 地震を受けて入所したのは避難者4組の9人(24日時点)。足が不自由な小学生の長男と入ったウェブデザイナーの財津友子さん(48)は「この子から長い間目を離すのは心配。避難所で食事をもらうため何時間も並べない。入れてもらえてありがたい」と話す。

 一方で、この施設はトイレ介助が必要な全盲の夫婦ら3組の受け入れ要請を断った。介助に特化した職員を配置するのが難しいためだ。施設は停電や断水に見舞われ、職員も被災。施設長の男性は「困っている人たちを受け入れたいが、人材が不足している中、災害に備えて職員配置にゆとりを持つのは難しい」と打ち明ける。

 熊本市は2012年の九州北部豪雨の後、災害時に福祉避難所を設置する協定を176の福祉施設などと結び、最大で1700人を受け入れてもらえるようにしていた。

 だが、24日現在で開設しているのは34カ所(104人入所)にとどまる。避難所を巡回する保健師が必要だと判断すれば、市が施設と交渉して受け入れてもらっているが、必要な介助が受けられる施設が近くにないといった理由で約30人が調整待ちだ。

施設も被災、食堂に80人

 熊本県西原村の特別養護老人ホームでは受け入れが最大となっていた19日、食堂に置かれたベッドやマットに高齢者約80人が横になっていた。村で唯一、福祉避難所になる協定を結んでいたが、15日に5人を受け入れた後は要請を断っている。責任者の看護師は「本来の入所者の世話ができなければ、二次災害が起きてしまう」と話す。

 実際は、自治体を通さず近くの福祉施設に避難する人や、受け入れている施設も多い。益城町の居宅介護事業所「あんず」は福祉避難所ではないが、地域の高齢者を自主的に受け、今も通常の宿泊定員9人を上回る16人が滞在する。

 ただ、避難所の扱いでないため支援の手は届きにくく、職員が朝晩、車で水をくみに行く。体調を壊す職員も出ており、管理者の長井伸一さん(45)は「いつまで持つか。先が見えない」と心配する。

 こうした中で、熊本市は福祉避難所のボランティアの募集を始め、24日までに120人の申し込みがあった。希望があった約30施設の一部で約40人が活動を始めているという。

 福祉避難所 民間の高齢者・障害者施設と市町村が協定を結び、指定されるケースが多い。要した費用は災害救助法に基づき国庫負担される。内閣府によると、阪神大震災をきっかけに必要性が指摘され、全国で事前指定が進められている。2014年10月時点で7647施設(791自治体)が指定された。

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